介護保険法にはショートスティという介護サービスはありません。”短期入所生活介護”と”短期入所療養介護”という二つの介護サービスを含んだ表現なのです。短期入所生活介護というのは、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)に併設されていたり、単独型の福祉施設で提供されているサービスです。多くの場合、数日から1週間程度短期間入所して、入浴、排泄、食事の介助や、簡単な機能訓練をおこないます。一方、短期入所療養介護は介護老人保健施設や介護療養型医療施設などの医療系施設に短期間入所して、医療管理下で介護や機能訓練を受けるサービスです。二つのサービスのうち、訪問診療が可能なのは短期入所生活介護のサービスを受けている方だけです。したがって、「ショートスティへ訪問診療をお願いします」という依頼では、訪問診療が可能かどうかの判断はできないのです。
事前に短期入所生活介護、短期入所療養介護どちらのサービスを受けているかの確認が必要です。受けているサービスの一番簡単な確認方法は、ご家族、ケアマネジャーさんなど往診の依頼者に確認してみることです。ケアマネジャーさんは患者さんのケアプランを作成しており、どの介護サービスを受けているかを把握しています。患者さんの入所している施設が提供しているサービスは、インターネットで調べることも可能です。介護事業所には、新規指定時や更新時にサービス内容を公表することが介護保険法で義務付けられています。”介護サービス情報公表支援センター”のホームページで検索することが可能です。地域や事業所などで検索すると、提供しているサービスの情報が閲覧できます。1年も1度情報が更新されるので、信頼性の高い情報です。なお、医療事務に関して気をつけるのは、次の点です。
短期入所生活介護への訪問診療では介護保険の算定はできず、全て医療保険だけで請求します。介護保険の居宅療養管理指導は算定せず、歯科疾患在宅療養管理料や訪問歯科衛生指導料で算定しなければなりません。また、短期入所生活介護を利用される方は、一定期間でご自宅に戻られる方がほとんどです。自宅では介護保険を算定することになります。同じ月に短期入所生活介護と自宅への診療が混在する場合には注意点があります。介護保険の歯科医師が行う居宅療養管理指導と医療保険の歯科疾患在宅療養管理料は、同じ月に重複して算定できないので、どちらか一方の算定になるという点です。