さまざまな組織や臓器の細胞になりうる幹細胞の培養液を使ってイヌの歯周病を再生治療することに、名古屋大大学院医学系研究科の上田実(うえだ・みのる)教授(頭頸部(とうけいぶ)・感覚器外科学)の研究チームが29日までに成功、人間への臨床研究を開始した。12月9日に米学術誌(電子版)に発表する。
幹細胞の培養液には細胞の増殖や分化などに関わるタンパク質が何種類も含まれており、幹細胞と同じ程度の組織再生能力がある。幹細胞そのものを移植すると、がん細胞化する恐れがあるため、培養液を使うことでこれを回避し、治療に要する費用も抑えることができるという。上田教授は「タンパク質を使った特効薬で歯周病の根治につながる」と話している。
研究チームは、これまでに培養液の中から歯周病の再生治療に有効な4種類のタンパク質を発見。今回、人の骨髄に由来する幹細胞を使い、培養液をコラーゲンでできたスポンジに染み込ませ、歯周組織に約5ミリの穴を開けて歯周病の状態にしたイヌに移植した。
4週間後、何もしなかった場合、歯周組織にある骨の再生は約2ミリ弱にとどまったのに対し、移植した場合は3ミリ以上再生し、再生面積は何もしない場合の2倍以上になった。歯の表面のセメント質も培養液で再生した。