兵庫県尼崎市の連続変死事件で12日、県警本部の留置場で自殺したとみられる角田(すみだ)美代子(みよこ)容疑者(64)=殺人容疑などで再逮捕。長袖Tシャツの袖で自ら首を絞め続け、窒息死することは可能なのか。専門家は「意識を失うまでの間に、きつく結び目を作っていれば、自絞死は可能」と話す。
杏林大の佐藤喜宣(さとう・よしのぶ)教授(法医学)は「自ら首を絞め続けても、結び目が無ければ意識を失った後に緩むため、失神して低酸素状態に陥ることはあっても、急死することはない」と分析する。
千例以上の司法解剖経験のある鈴木修(すずき・おさむ)浜松医科大理事(法医学)も「Tシャツは一般的に伸縮性が高く、仮に結び目を作っても緩みが生じる可能性が高い。Tシャツを使った自絞死は極めてまれだ」と指摘する。
その上で「体が強くけいれんするため、同室の2人が起きてしまう」と一気に死に至る急性窒息を否定し、徐々に意識レベルが下がる「遷延性(せんえんせい)窒息」の可能性に言及。「角田容疑者は普通の人より意志が強い人物だと考えられる。呼吸ができない苦しみに耐え、徐々に死に至ったのではないか」と分析した。
佐藤教授によると、首を強く縛ると、早ければ1分程度で意識を失う。結び目を二重にするなどきつく結ばなくても、結び目が固定されていれば自絞死は可能だという。
角田容疑者が首に巻き付けた長袖Tシャツは、弁護士が差し入れたものだった。留置場では自殺防止などの観点から差し入れが制限されるが、衣類の規制は少ない。佐藤教授は「冬場で長袖のTシャツの使用が許されていたのだろうが、盲点だった」と話した。