元日の1日、東京都内では、お年寄りなど7人が、餅をのどに詰まらせて救急車で病院に運ばれ、このうち68歳の男性が死亡しました。事故を防ぐため、専門家は「のどをお茶や水で湿らせてから、薄く、小さく切った餅をゆっくりかんで食べるようにしてほしい」と話しています。
東京消防庁によりますと、都内では、年間に平均120人が餅や団子などをのどに詰まらせて救急搬送され、去年までの5年間で604人に上っています。月別で最も多いのは1月で36%、次が12月で15%。この2か月で全体の半数を超えます。年齢別では65歳以上が89%を占め、この時期の高齢者の窒息事故に注意が必要です。
窒息事故に詳しい昭和大学歯学部の向井美惠教授によりますと、高齢者は、食べ物をかむ力や飲み込む力が弱まったり唾液の量が減ったりするほか、物がつまりかけたときにせきをして外に出そうとする反応も弱くなっているということです。
そこで、向井教授は、高齢者が餅を食べるときの注意点として、▽薄く短冊形に切ってから少しずつ食べる、▽食べる前に、水や茶を飲んでのどを湿らせておく、▽ゆっくり何度もかんで、唾液とよく混ぜてから飲み込むなどを挙げています。また、▽話をするときの息継ぎで気道に食べ物が入ってしまうことがあるため、餅を口に入れたときは話をしないこと、▽驚いたときは息を吸って食べ物が気道に入りやすいので、食事中には周囲の人が驚かせないことも大切だと話しています。
万が一、餅がのどに詰まったときの応急処置の方法を覚えておくことも重要です。東京消防庁は、大きな声で周囲に助けを呼び、119番通報をするとともに、食べ物を詰まらせた人の背中の肩甲骨と肩甲骨の間を4回から5回、強く叩く方法をホームページで紹介しています。
このほか、予防のために、従来の餅よりねばりが少なく噛み切りやすい商品も登場しています。長野県の製薬メーカーが開発した餅は、普通のごはんと同じ「うるち米」が主な原料で、メーカーによりますと、もち米で作られた市販の切り餅に比べてくっつきやすさが半分ほど、固さが4割ほどだということです。
東京・豊島区にある特別養護老人ホームは、うるち米で作った餅を使って汁粉などを作り入所している人に出しています。ホームの管理栄養士は「お年寄りは餅が大好きですが、窒息などの危険があって、施設としてなかなか使えないので、餅に近いものを出してあげたいという思いがあり、この商品を使うようになりました」と話しています。