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Q嚥下性肺炎について教えてください。

肺炎には間質性肺炎、細菌性肺炎、ウイルス性肺炎などがあります。しかし、高齢者のかかる肺炎には、食物や唾液などの誤嚥が原因で起こる嚥下性肺炎が多いと考えられています。脳卒中などで嚥下障害があれば当然嚥下性肺炎の危険が高まります。高齢者はわずかな誤嚥が重篤な肺炎や呼吸器疾患につながりやすいことを忘れてはなりません。高齢者が肺炎になると身体の抵抗力がないために、なかなか治りません。体力の消耗も激しく、寝たきりになるきっかけとなる場合もあります。また、脳卒中のリハビリテーション中に嚥下性肺炎になると訓練が中断して全身の体力が低下し、健常側の筋力低下や麻痺側の関節拘縮が進むなどさまざまな弊害が起こります。このような嚥下性肺炎で死亡する例もかなりあります。さて、誤嚥するとすぐ肺炎になるのでしょうか?
 実際は必ずしもそうではありません。肺炎になるかどうかは、誤嚥する量や頻度、誤嚥するものの種類に大きく左右されます。また、全身状態や肺の防御機構、排泄機構との関係もあるので、ある人は肺炎や無気肺になり、ある人は何も起こらないということがあり得るのです。とはいえ、高齢の脳卒中患者さんは全身状態が悪く、生体の防御機構が低下しているため、少量の誤嚥がきっかけで肺炎になることが少なくありません。「誤嚥しても安全だ」などと思ってはいけないのはいうまでもありません。嚥下性肺炎の原因のには、食物の誤嚥以外に主に次の二つの機序が考えられています。一つは咽頭や喉頭の粘膜に細菌の巣(コロニー)ができていて、細菌を含んだ唾液などの分泌物を絶えず誤嚥していること、もう一つは夜間睡眠中、少量の胃ー食道逆流により胃内容物を誤嚥していることです。後者の場合は大量の細菌を含んでいるうえに、酸や消化液は化学的に気道粘膜を損傷するため、そこに栄養分を含んだ食物が入ってくると細菌が急速に繁殖して肺炎が起こると考えれます。
 一度嚥下性の肺炎を起こすと、気道粘膜はなかなか完全には回復しません。そして粘膜の知覚が鈍麻して、誤嚥しても咳が起こりにくくなり、食物を有効に排泄できないためますます肺炎の危険が増大する、という悪循環が起こります。