Kさんは、ご主人と二人の娘さんに恵まれ、幸せな生活を送っていました。在
宅でご主人の介護をするなど、とても献身的な方だったそうです。ご主人を看取
った今では、自身も病院に入院。口から食事を摂ることができない状態でした。
そんなKさんの夢は、「ひな祭りにちらし寿司とはまぐりのお吸い物を、もう
一度自分の口から食べること」です。そのために、口腔ケアと嚥下訓練に一生懸
命に取り組む姿をFさんはいつも目にしていました。
ある日、主治医からKさんにとって最後のひな祭りになるかもしれないという
話を聞きます。
「なんとかして願いを叶えてあげたい!」
その一心で調理師や主治医と相談し、やり方を考え抜いたFさん。ようやく
「これならイケる!」という方法を見つけて、口から食べさせることに成功した
のです。
Kさんは食事を摂りながら微笑み、次のように話してくれました。
「いつもキレイにしてもらっている口から食べるご飯はとても美味しいわね。本
当に幸せ。この病院に入院してよかった。ありがとう」
Fさんは、毎日の口腔ケアが、患者さんの願いを叶える礎を築いたのだと実感
したそうです。「“自分の口でご飯を食べる幸せ”を感じてもらいたい。そのた
めに、これからも口腔ケアを念入りに行なっていきます」と決意新たに話してく
れました。