「認知症の人と家族の会」の高見国生(たかみ・くにお)・代表理事は「昨年の国の推計よりは実態に近いだろう。国は結果を受け止め、認知症対策に真剣に取り組むべきだ」と強調する。
その上で、政府の社会保障制度改革国民会議などで、軽度の人を介護保険から切り離す議論がされている点に疑問を呈し「認知症は初期、軽度から対応し、進行を遅らせることが大切だ」と訴える。
厚労省は、13年度から「認知症施策推進5カ年計画(オレンジプラン)」をスタートさせたばかり。早期診断、早期対応を柱に認知症高齢者が地域で暮らせるよう支援する方針だ。
看護師や作業療法士らのチームによる本人や家族のサポートが目玉だが、まだモデル事業の段階で、制度化の検討は15年度からだ。認知症の現状を捉え直した上で、将来を見据えた支援の在り方を社会全体で考えることが求められる。
※認知症と軽度認知障害
認知症は、脳の神経細胞が死んだり、働きが悪くなったりして記憶力や判断力が低下し、日常生活に支障が出ている状態。原因はアルツハイマー病や脳血管障害などさまざまで、物忘れや妄想、徘徊(はいかい)などの症状が出る。薬で病気の進行を遅らせる治療があるが、根本的な治療法は確立されていない。軽度認知障害は、正常と認知症の間の状態。記憶などの能力が年齢の水準より低下しているものの、日常生活は送ることができる。アルツハイマー病などに先行して起き、一定割合の人が加齢とともに認知症に移行するとされる。