1980年代半ばから、日本人の死因は1位が癌、2位が心疾患、3位が脳血管疾患という状態が続いてきた。しかし、80年代に入って増加に転じた肺炎が、じわじわとその数を増やし、2011年にはついに脳血管疾患を上回り、死因の3位に躍り出た。
「健康寿命」の延長を狙う
そんな現状に対する危機感から実施されるのが、日本呼吸器学会の「『ストップ肺炎』キャンペーン」だ。
ただし、このキャンペーンは、肺炎による死亡者数を減らすこと自体を目的としているわけではない。仮に高齢者が最終的には肺炎で死亡するとしても、それまでの期間は肺炎に罹患することなく健康寿命を全うできるようにする─。それが「ストップ肺炎」キャンペーンの目指すところだ。
この点について、キャンペーン推進委員会委員長の長崎大学病院院長の河野茂氏は次のように語る。
「肺炎について一般の人は、抗菌薬で治る病気くらいにしか考えていないが、高齢者では重篤な疾患となり得る。実際、肺炎で亡くなる人の96%以上が65歳以上の高齢者だ。今後も高齢化が進む以上、肺炎による死亡そのものを減らすことは困難だが、誤嚥性肺炎を繰り返してつらい思いをするような例は予防によって防げる場合もある。そのための啓発活動を一般の人と医療従事者の双方に行っていく」