米国癌学会(AACR)は、8月21日、口腔健康状態の不良が中咽頭癌の原因の約40-80%を占める口腔ヒトパピローマウイルス(HPV)感染と関連しているとする研究結果を紹介した。学会発行のCancer Prevention Research誌に掲載。
生殖器の場合と同様、口腔HPV感染にも、発癌性はないが口腔に良性腫瘍や疣贅を生じる可能性のあるローリスクHPVの感染と、中咽頭癌発生の可能性のあるハイリスクHPVの感染の2種類が存在し得る。
研究では、米国疾病対策センター(CDC)の全国衛生統計センターが米国住民を代表する5000人を対象に毎年実施する全国健康栄養調査(NHANES)の2009-2010年度のデータを分析。対象者の年齢は30-69歳で、自己評価、歯周病の有無、過去7日間に歯の疾患の治療にうがい薬を使用したかどうか、失った歯の本数の4つの評価尺度を含む口腔健康状態を特定でき、しかも口腔内におけるローリスク型HPV19種類およびハイリスク型HPV18種類の有無に関するデータも揃った3439人。年齢、性別、配偶者の有無、大麻使用、喫煙、HPV感染に特に影響を及ぼすオーラルセックスの習慣を調査した。
調査の結果、オーラルセックスの習慣があり大麻を使用する男性の喫煙者で、口腔HPV感染の可能性が増大することが分かった。また、全体的な口腔健康状態の自己評価は感染の独立危険因子であることも確認された。口腔健康状態の不良を報告した者では口腔HPV感染の罹患率が56%高く、歯周病、歯に関する問題を有する者では、それぞれ51%、28%高かった。また、口腔HPV感染と失った歯の本数の間にも関連があることが分かった。
研究者らは、口腔の健康状態と口腔HPV感染の因果関係の確認にはさらなる研究が必要だとしつつ、口腔健康の基本である口腔内の衛生維持の実践を習慣付けるべきと述べている。