「歯垢(しこう)を赤く染め出した時に8割落ちているのが合格の目安です」と馬見塚(まみづか)デンタルクリニック(東京都中央区)の馬見塚賢一郎院長(52)。同院は予防に力を入れており、年数回は定期的に受診する、歯の健康に関心の高い患者が約1000人いるという。その人たちを含めて「合格」は、わずか1割弱。「一般的には、九分九厘きちんと磨けていません」
現実を知ったところで、歯の常識クイズ。次の四つで正しいと思うものはどれだろう。
(1)歯磨き剤はなるべくつけない方がよい。
(2)歯磨き後はしっかり口をゆすいで歯磨き剤を落とす。
(3)中高年は歯ぐきを磨いてマッサージすべきだ。
(4)歯磨きで歯垢を完全に取っても、歯石は防げない。
実は、正解はない。馬見塚院長によると、寝る前にフッ素入り歯磨き剤を使って、歯と歯ぐきの境目を中心に念入りに磨き、できるだけゆすがないのが虫歯や歯周病予防の基本だ。
歯垢は24時間で「バイオフィルム」という細菌の塊になる。「イメージとしては排水管のぬめり。こうなってしまうと歯磨きでは簡単に落ちません」と馬見塚院長。このため、1日1回はしっかり磨きたい。唾液の減る就寝の前が最も効果的だ。
永久歯は親知らずを除いても28本。かつて「3分磨き」という言葉があったが、3分間では1本あたり5、6秒しか磨けない。馬見塚院長は「入浴中やテレビを見ながらの『ながら磨き』でもいい。時間をかけましょう」と助言する。
歯磨き剤には「歯を強くするフッ素入りのものを」と勧める。「世界的に低濃度のフッ素を毎日使うのが推奨されている」という。口をゆすぐとフッ素が流出してしまうので、歯磨き剤を吐き出したあとは、大さじ1杯弱の水で1度だけすすぐのを勧める。それでは気持ちが悪い人には、歯科で販売しているフッ素洗口液ですすぐ方法もある。
市販品は「フッ素配合」の表記があるか、成分にフッ化ナトリウム▽フッ化第1スズ▽モノフルオロリン酸ナトリウムと書かれたものがフッ素入りだ。歯科では、濃度も明示された製品が購入できる。
研磨剤入りの方が、汚れは落ちやすく、低研磨性のものを選べば歯にも優しい.