嚥下機能の回復や認知機能の安定などにより、すべての栄養摂取を経口からすることが出来なくても、一部経口摂取が可能な患者も多く、これにより患者と患者家族のQOLは著しく向上する。胃瘻患者が安全に経口摂取を楽しむためには、食形態、食介助法、姿勢など一定の配慮が必要であるのは言うまでもないが、患者の食べることの可否やどの程度まで安全に食べることができるかということについては、患者本人の摂食機能にのみ左右されるものではない。患者の摂食機能は、それを決定する一つの指標に過ぎなく、むしろ、患者を支える環境因子こそがこれを決定する際に大きな影響を与えるともいえる。すなわち、患者の咀嚼機能や嚥下機能が大きく障害されていても、患者の機能に適した食形態を提供できる体制であれば、さらには、食事の介助場面においても適正な食事姿勢をとることができ、十分な見守りのもと介助できる環境であれば、患者は安全に食べることができる。環境においては、いつ何時、窒息事故や誤嚥事故が発生してもおかしくはない。在宅における摂食・嚥下リハビリテーションにおいてはこの環境整備に最も労力を要する。在宅摂食・嚥下リハビリテーションにおいては、主治医や訪問看護師、そして、言語聴覚士など訪問リハスタッフとの連携はもとより、介護関連職種との連携は欠かせない。