現在、日本人においては、2人に1人が「がん」を経験し、3~4人に1人が「がん」で亡くなっています。がんは医学が進歩した現代においても、まだ予防することができず発生頻度および死亡率が増加しています。特に年齢とともに発癌率は上昇します。口腔がんの発生頻度は、からだ全体に発生するがんの1~2%ですが、やはり他の部位のがんと同様に増加しており、死亡率も増加しています。
口腔がんを治療する場合、進行したがんでは手術、放射線治療、化学療法などを併用して治療するため、からだへの侵襲は大きく、治療期間も長くなり、さらに治療成績も悪くなります。しかし、早期がんでは手術単独または放射線単独での治療が可能で、治療期間も短く、良い治療成績を得ることができます。
これらのことから、私たちは前がん病変や前がん状態にも注意を払い、なるべく早期でがんを見つけたいと考えています。幸い口腔内は他の部位と異なり観察するのに麻酔、X線検査、内視鏡等の道具を必要とせず、何回でも直接見て触る事ができます。早期口腔がんの症状は治癒傾向のない、腫瘤、粘膜のただれ、白斑、発赤等を呈します。前がん病変には白板症と口腔扁平苔癬という疾患があります。これらも白斑、粘膜のただれ、発赤を呈します。口腔がんは乳がんと同様にご自身でチェックすることができます。皆さんに口腔がんの症状を知っていただいて、異常に気づかれたら医療機関を受診していただきたいと思います。
生活習慣としては、喫煙、飲酒は口腔がんだけでなく他の部位のがんでも大きな危険因子としてあげられ、禁煙、節酒はがんの予防には大切になります。さらに歯を失わない事もがんの予防には大切です。働き盛りから高齢者のどの世代でも歯周病の治療、予防は大切になります。
旭川赤十字病院