医療機関に支払われる診療報酬が4月に改定され、有料老人ホームなど高齢者施設への訪問診療の報酬が大幅に減額された影響で、全国の少なくとも155施設で医療機関が撤退したり交代したりしたことが、20日までに全国特定施設事業者協議会など業界団体の調査で分かった。
改定で報酬は最大約4分の3カット。施設で一度に大勢の患者を診察する医師の「荒稼ぎ」を防ぐ狙いだったが、現場からの反発が強まっており、厚生労働省も来月以降、影響を調べる予定だ。
今回の調査は5~6月に、有料老人ホームや認知症グループホーム、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などの事業者でつくる計4団体が共同で実施。1764施設から回答を得た。
医療機関の撤退や交代があったのは、おおむね11カ所に1カ所の割合。有料ホームやサ高住は都市部に多いため、撤退や交代のケースも東京都が最も多く30施設で、大阪府21、神奈川県18、兵庫県14と続いた。
医療機関が報酬カットを避けるため、訪問回数を増やすなど診療方法を変更したケースが約半数の867施設に上った。このうち約6割の530施設が「方法変更で入居者に不利益や問題が出ている」と答えた。
具体的な影響として「訪問日時が不規則で、施設側から医師への情報提供が難しくなった」「診察時間が短くなった」などの指摘があった。