消費者庁が食品の表示に関する新しい制度を始めるため準備中です。食品に含まれる成分がどう体によいかという「機能性」を示すもので、特定保健用食品(トクホ)など既存の2制度に続く第3の機能性表示になります。制度をよりよくするために、消費者庁は案(表示基準案)を公表して26日まで国民から意見を募っています。既に開いた説明会では食品業界を含め多くの質問が出ました。ポイントや課題をQ&Aでまとめました。
◇食品の機能性表示Q&A
Q 新しい機能性表示は、どんな根拠があれば認められますか。
A 原則として消費者に販売される製品を人に食べてもらう臨床試験をやったか、体によいと表示したい「機能成分」の有効性などを示す複数の質の高い研究文献があれば、販売事業者は自己責任で表示できます。ただし、根拠となる情報を公表する必要があります。また薬ではないので病気を治すことを目的としていないことや、国の評価を受けたものではない、との表示も必要になります。
Q 新たに機能性が表示できる食品はどのような名称ですか。
A 既にある制度では、例えば「おなかの調子を整える」などと表示できるのが「特定保健用食品」、カルシウムなど栄養成分の機能を表示できるのが「栄養機能食品」です。消費者庁は新制度を「機能性表示食品」とする案を示していますが、現在、名称を募集中です。ただし「保健」「栄養」という言葉は使えないそうです。
●販売時期は未定
Q いつから始まりますか。
A 始める時期は、「今年度中(来年3月まで)に実施」と昨年6月に閣議決定していますが、いつから販売できるかは現時点では未定です。新制度に沿った機能性を表示して販売する場合は、科学的な根拠などをまとめた必要事項を販売日の60日前までに消費者庁に届け出る必要があります。
Q 新しい機能性表示の範囲に関して、「栄養素の過剰摂取につながる食品を除く」とありますが、その栄養素とは何ですか?
A 対象外となる栄養素のことで、脂質、飽和脂肪酸、糖類(単糖類と二糖類で糖アルコールは除く)、コレステロール、ナトリウムの五つです。例えば、塩分の多い漬物のような食品はたとえ機能成分があっても、塩分の過剰摂取につながる恐れがあるため認められないという意味です。ただし、塩分や脂質などがどれだけ含まれていれば、認められないかは線引きが難しく、今後の検討課題です。
●生鮮品も対象に
Q ミカンや魚など生鮮品も対象になりますが、個人の農家や農協のような団体でも表示して販売できますか。
A 個人でも団体でも、科学的なデータを整えて届け出れば、表示して販売できます。
Q 生鮮品の場合、同じ種類の魚、作物でも個体差があって、機能成分の量にバラツキがあると思いますが、どの程度のバラツキなら許されるのですか。
A 機能成分にバラツキが出てくる要因はいろいろあります。農林水産省など関係省庁と協議して分かりやすい目安を示すそうです。
Q 機能性表示の根拠となる科学論文は販売業者のホームページで読めますか。
A 消費者庁に届けられた資料は、消費者は同庁のホームページなどで見られるようになります。ただ、事業者のホームページに詳しい論文を載せるかどうかなどは決まっておらず、今後の検討課題です。
Q 健康によい油として知られるドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)は表示の対象になりますか。
A なります。魚に含まれる成分だけに関心が高いようです。
Q すでにトクホで表示でき、脂肪の吸収を抑えるなどの特徴のある「難消化性デキストリン」(食物繊維の一種)は表示できますか。
A 説明会では「表示できる」との答えでしたが、トクホには表示対象外の栄養成分(カルシウムやビタミンKなど)もあり、トクホで認めてきた成分のうち、どれを表示対象とするかに消費者庁も苦慮していて、今後の検討課題のようです。
Q 販売後に機能性表示の根拠がなかったと分かった場合、その商品の広告を載せた新聞や雑誌なども責任を問われるでしょうか。
A 食品表示基準はあくまでラベルの基準に関する規定です。広告に根拠のない誇大表示があれば従来通り、景品表示法と健康増進法に基づいて判断されます。消費者庁は今後、誇大表示への監視体制を強化していくそうです。
Q 表示に科学的根拠が乏しいと分かった場合、適格消費者団体(消費者の利益を守るために活動し、首相が認めた11の消費者団体)は販売の差し止め請求をできますか?
A 差し止め請求の対象にはなりません。しかし、表示が適切でないと感じた消費者からの申し出が多くなれば、消費者庁が必要な調査、措置をとることができます。【小島正美】
◇消費者庁が意見募集
消費者庁は近くまとめるガイドライン(指針)で詳しい基準を示すが、その基準を作るため26日(郵送は同日必着)まで、意見を募集している。表示基準案の内容は同庁のホームページ「パブリックコメント」内の「食品の新たな機能性表示制度に係る食品表示基準(案)についての意見募集」で公表している。
郵送での送り先は〒100-6178東京都千代田区永田町2の11の1山王パークタワー5階、消費者庁食品表示企画課。ファクス(03・3507・9292)でも提出できる。
◇新たな機能性表示制度
対象はサプリメントを含む加工食品と農林水産物。科学的根拠があれば、食品成分の機能性が表示できる。特定保健用食品、栄養機能食品に次いで三つ目の表示制度となる。政府の規制改革会議が昨年6月、日本再興戦略のひとつとして、食品の機能性を認める方策を決め、それに沿って検討されてきた。