ボランティアでの歯科健診を通じ、児童虐待の防止や食生活の改善に取り組む歯科が増えている。児童虐待について、全国の児童相談所が受けた相談対応の件数は2013年度に7万3765件(前年度比10・6%増)と年々増えており、虐待を早期発見する端緒として、医療機関の役割が注目されている。
兵庫県西宮市の幼保一体型施設「夙川プリスクール」で今月15日、「夙川マサト歯科」の内藤真人院長(52)が5歳児と対面し、歯や舌の健康状態をチェックしながら、「ごはんはおいしい?」「何が好き?」などと会話を交わした。内藤院長は「虐待や育児放棄を受けている子は、虫歯が多かったり、頬に傷があったりすることが多い。待っている時の様子も見て、生活に問題がないか判断している」と話す。
大阪市旭区の「高殿歯科」も近くの児童らに無料での健診を呼び掛け、入り口に子供が描いた絵を展示するなどの工夫もしている。歯科医の梅村哲弘さん(34)は以前、幼稚園の健診で大半の歯が根元しか残っていない状態の児童を見て、「まともな治療を一度も受けないまま放置されている。虐待を受けていると感じた」という。
日本歯科医師会が昨年実施したアンケート調査では、全国で15都府県の歯科医師会が児童虐待に関して児童相談所などと連携。9都府県では、虐待の疑いがあるとして通告した事例があった。梅村さんは「親に面と向かって『虐待ですよ』というのは難しいが、食生活の改善指導を通して子供の健康を守りたい」と話している。