兵庫医科大(西宮市)などの研究グループは31日、食物をのみ込む力が低下した「嚥下(えんげ)障害」に対し、喉の神経を微弱な電気で刺激して治療する世界初の機器を開発した、と発表した。嚥下障害は食べる楽しみを奪い、死因の3位である肺炎を引き起こすが、根本的な治療法がなかった。機器は9月下旬に発売予定。
食物が喉に達すると喉の神経から脳へ情報が伝わり、脳が命令を出して食物を食道、胃へと送るのが「嚥下」。嚥下に障害があると、誤って空気が通る「気管」に食物が入り、肺炎の危険が高まる。
嚥下障害は脳卒中などのため喉の神経活動が低下し、脳の命令が遅くなることが主な原因。年間約40万人の脳卒中患者のうち、7割以上に起こるという。
開発した機器は、食事の際、首にパッドを付けて微弱な電気を流し、喉の神経活動を活発にする。従来あった嚥下の筋肉を強化する電気治療器を参考にし、電気を弱めて流し方を工夫。従来機器の問題だった痛みをなくした。
開発した機器を12人の患者に試した結果、嚥下の速度が約15%改善し、正常化。機器は医療機器製造販売「ジェイクラフト」(大阪府和泉市)が手掛け、7月に製造販売の認証を受けた。兵庫医科大生理学講座の越久仁敬主任教授(56)は「兵庫発で全国にこの新治療法を広げたい」と話す。