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ドライマウスの新治療法を開発

徳島大学大学院口腔顎顔面矯正学分野博士課程の佐藤南氏らの研究グループはこのほど、ドライマウスが低出力パルス超音波(LIPUS)の照射によって改善することを、マウス実験で確認したと発表した。炎症性サイトカインTNFαの発現が減弱し、唾液腺に局在する水チャネルが増強することで唾液分泌の増加が示されたという。同グループでは、ドライマウスに対する新たな非侵襲的治療法の開発につながるとの見解を示している。

 ドライマウスは、中年女性に好発する難治性自己免疫疾患のシェーグレン症候群の口腔症状の1つで、唾液腺破壊から唾液腺の炎症とそれに伴う唾液分泌量低下で生じる。佐藤氏らによると、臨床現場では、人工唾液など口腔内を浸潤化することを目的とした対症療法が中心で治療法は確立されていないという。そこで同氏や同大学院口腔顎顔面矯正学分野教授の田中栄二氏、同大学院口腔内科学分野教授の東雅之氏らは、LIPUSによるマウス実験を試みた。

 実験では、炎症状態下の唾液腺細胞とシェーグレン症候群様のモデルマウスを用い、唾液腺にLIPUSの照射を行った。すると、転写因子として働く蛋白質複合体のNFκB経路を抑制的に制御する脱ユビキチン化酵素A20が活性化することでTNFαの発現が減弱、抗炎症作用を示した。このため水分泌に関与する唾液中の水チャネル「アクアポリン5」の発現が増強し、唾液分泌が増加し得ることが確認された。

 以上から、佐藤氏らは「唾液腺分泌機能に対するLIPUSの奏功率や奏功時間を検討する必要はあるが、対症療法のみだったドライマウスの治療現場に福音をもたらす」とのコメントを発している。