がんなどで舌を摘出し、発声が困難になった人の口の中に取り付け、明瞭な発声を可能にする「人工舌」の開発に、岡山大歯学部の皆木省吾(みなぎ・しょうご)教授(58)らのチームが31日までに成功した。
チームは、舌の機能を人工的に再現した可動式器具の開発は、世界で初めてと説明している。
日本癌(がん)治療学会によると、国内の口腔(こうくう)がんの年間の発症者は、1975年には約2100人だったが、2005年には約6900人と3倍以上に増加。交通事故や労災事故で舌を失うケースもあり、人工舌開発は、患者らに朗報となりそうだ。
人が声を発する際には、口の中の天井部分(口蓋(こうがい))に舌が触れることが必要だが、舌を摘出すると接触できず、発声が困難になる。
チームは、歯科治療などに用いる樹脂を使い、患者の歯型や口の中の形に合うように舌を作製。奥歯にワイヤでつないで上下に動くようにしてあり、わずかに残った本来の舌が人工舌をはね上げ、口蓋に触れる仕組み。
口蓋にはPAPと呼ばれる詰め物をはめ込んで厚みを増し、人工舌が口蓋に触れやすくする。
皆木教授は「既に歯科の現場で使われている材料を用いており、歯科技工士なら簡単に作ることができる。技術を全国の医療機関に提供して、一人でも多くの人の役に立ちたい」と話している。
舌がんで舌を摘出した岡山大の小崎健一(こざき・けんいち)教授(51)が開発に協力した。