食べ物をよくかめない人はメタボリック症候群になっている割合が比較的高いという研究成果を、新潟大大学院医歯学総合研究科の小野高裕教授を中心とする研究グループがまとめた。小野氏によると、かむこととメタボ症候群の関連性を具体的に明らかにしたのは初めて。歯学分野の国際的な学術誌「ジャーナル・オブ・デンティストリー」の電子版に掲載されている。
研究グループは代表の小野氏のほか、大阪大と国立循環器病研究センターの研究者4人で構成。2008~13年にかむ能力を測る専用のグミを用いて50~70代の1780人を調査した。それぞれグミを30回かんでもらい、グミがどれだけ細かくなり、表面積が増えたかを指標に測定した。
よくかむ習慣がない人が含まれることや、性別、飲酒の習慣の有無なども考慮し、「かむ能力」として結果を4段階で評価すると、下から2番目となる「あまりかめなかった人」は、最も高い「よくかめた人」に比べてメタボ症候群の割合が1・46倍高かった。
一方、かむ能力が最も低い「ほとんどかめなかった人」にメタボ症候群は多くなかった。かめないと自覚していることで、食生活にも一定の配慮をしている可能性がある。
小野氏は「下から2番目の人たちは、よくかめていないことを自覚していない可能性がある」と分析。こうした人たちが無意識にメタボ症候群になりやすい、偏った食生活になるリスクを指摘した。
小野氏は研究成果について「歯科検診でかむ能力が衰えていることが分かった人にはメタボ症候群の検診を勧めるなど、歯科と医科の連携につなげたい」と話した。かむ能力が低いことがメタボ症候群の原因の一つかどうかは未解明で、研究グループは調査を続ける