犬の幹細胞から作り出した歯のもとになる「歯胚(しはい)」を、同じ犬の歯が抜けた部分に移植し、天然の歯とほぼ同じものを再生することに成功したと、岡山大と理化学研究所多細胞システム形成研究センター(神戸市)のチームが16日付の英科学誌電子版に発表した。
マウスでも成功例の報告があるが、岡山大の窪木拓男(くぼき・たくお)教授は「実用的な歯の再生治療が可能なことを大きな動物で実証した。人への応用を目指したい」としている。
チームは生後約1カ月のビーグル犬の小臼歯から歯胚を採取。この歯胚から、さまざまな組織になる能力を持つ幹細胞を含む上皮組織と、幹細胞である間葉細胞を取り出して一緒にし、再生歯胚を作製した。これを2日間培養し、同じビーグル犬の下顎の歯が抜けた部分に移植すると、約6カ月で歯が生えた。できた歯は硬く、構造や働きは天然の歯とほぼ同じだった。自己の幹細胞を使うため、移植後の拒絶反応の懸念もないという。
将来、人へ応用する際は、皮膚などから幹細胞を取り出して再生歯胚を作ることも想定しており、さらに研究を進める。
また、ビーグル犬の胎児の大臼歯から歯胚を摘出し、同様の方法で再生歯胚を作製。これをマウスの腎臓に移植すると、8週目に天然と同じ構造の歯を作れたとしている。