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歯の治療 障害者も気軽に

発達障害や身体障害を抱える人を治療する「みき歯科 三越通りクリニック」が、高松市丸の内にオープンした。障害者を積極的に受け入れる個人の歯科医院は香川では少なく、患者が受診をためらって治療が遅れるケースも多いという。院長(34)は「みんなが気軽に通えるクリニックにして、症状に合った診療を心がけたい」と意気込む。(福元淳也)

 「怖くないですよ。もう少し口を開いてくださいね」。19日、三木院長とスタッフは折れた前歯の治療に訪れた40歳代の女性に優しく声をかけ、差し歯用の歯型を取った。女性は高松市内の障害者福祉施設に入所しており、施設の看護師(58)は「丁寧に診察してもらえ、本人も喜んでいる。障害者を受け入れる歯科医院は少ないのでとても助かります」と喜んだ。

 クリニックのオープンは17日。院長は2009年4月~今年3月、高松市のかがわ総合リハビリテーションセンターで障害者の診察にあたった。
 専門医を志した原点は、過去に経験した自閉症の患者に対する治療。16歳くらいの少年が暴れて虫歯治療を拒絶したため、両腕をネットで拘束して、頭が動かないようスタッフに頭を押さえつけてもらいながら治療した。強烈な経験は夢にまで再現されて三木院長を苦しめ、「どうやったら気持ちよく診察してもらえるのか」と考えるようになったという。

 同センターに勤務しながら、香川大大学院で自閉症をはじめ、脳性マヒや脳血管障害など、症例ごとの対処法を学んだ。リラックスして口を開けてもらえるよう、手先から肘、肩、首をさする技術も身につけた。

 院長は「診察時には、患者やその家族とのコミュニケーションも心がけました」と振り返る。診察時に動けば口の中を大けがする危険性や、治療しなければかみ合わせがずれて顎関節症になったり、菌が血管に入り込んだりする可能性も丁寧に説明したという。歯磨きができなかった女児には、ブラシの使い方をパネルも用いて何度も指導し、習慣づけた。

 「患者の人格を尊重しながら診察できるようになった」と手応えを感じ、独立に踏み切った。