歯科医師 原田尚也(北海道 65)
公共の場での屋内全面禁煙を、と訴える社説「たばこ対策 五輪にともる黄信号」(17日)に同感である。私は歯科開業医だが、40年近く臨床を経験するなか、喫煙はもちろん受動喫煙が、口の中の健康に悪影響を及ぼす症例を多く見てきた。
歯茎が黒くなっている小児患者は、親がヘビースモーカーという例が多い。副流煙に含まれるタールが沈着している可能性が強いと思われる。以前、真面目に治療に通ってくるのになかなか歯周病が改善せず、歯茎が黒い非喫煙の患者がおり、よく聞くと職場の同僚のほとんどが喫煙者だった、という例にも出合った。
ニコチンは血管を収縮させ末梢(まっしょう)血液の循環量を減らし、細胞の新陳代謝を妨げることから歯周病を進行させる。喫煙者だけでなく、受動喫煙でも歯周病のリスクが高まることは、国立がん研究センターの疫学研究で明らかになっている。全身の健康状態に悪影響を及ぼすことは疑いの余地がない。
国民の健康寿命を延ばしたいと考えるのであれば、禁煙のきっかけとして「たばこのない五輪」は良い機会になると思う。ぜひ「屋内全面禁煙」を目指して欲しい。2017年4月21日 (金)配信朝日新聞