集中治療室での治療が妥当か3項目で判定
敗血症の新定義は、qSOFA(quick Sequential [Sepsis-related] Organ Failure Assessment)およびSOFAから構成される。qSOFAは、2016年に提唱されたICU入室前の敗血症および敗血症性ショックの診断基準(JAMA 2016; 315: 762-774)。大規模患者コホートでの検証により、(1)呼吸数(22回/分以上)、(2)意識変容(GCS<15)、(3)収縮期血圧のうち2点以上で、1点の場合に比べ死亡率が3-14倍に高まる――などの知見を得て提唱された基準。ICU内でSOFAスコア(PaO2/FiO2比、GCS、強心剤使用など6つの変数で構成)がベースラインより2点以上増加すると、敗血症と診断される。
院内肺炎/NHCAPでは誤嚥、耐性菌リスク評価を推奨
新ガイドラインでは、市中肺炎および院内肺炎/NHCAPの診断・治療、肺炎予防に関する25項目のクリニカルクエスチョン(CQ)と推奨を提示。Mindsの手法に沿ったシステマチックレビューとメタ解析に基づくエビデンスレベルと、委員の投票による推奨度などを決定した。「各CQに関して利益相反のある委員は投票に参加できないこととされた」(門田氏)
各CQに対する推奨の強さの決定には、(1)アウトカム全般に対する全体的なエビデンスの強さ、(2)益と害のバランスは確実か(コストは含まない)、(3)患者の価値観や好みを反映しているか、(4)負担の確実さ(あるいは相違)、正味の利益がコストや資源に十分見合っているか――の4項目を評価。
「市中肺炎に対し全身性ステロイドを使用しないことを提案する(実施しないことを弱く推奨、同意率70%)。ただし、重症成人市中肺炎に対して、全身性ステロイドを使用することを提案する(実施することを弱く推奨、同意率80%)」や「市中肺炎に対するエンピリック治療としてβラクタム系薬にマクロライド系薬を併用しないことを推奨する。ただし、重症例においてはβラクタム系薬単剤治療よりもβラクタム系薬・マクロライド系薬併用療法を行うことを推奨する」などを提唱。院内肺炎ではI-ROADによる重症度評価、NHCAPではA-DROP、CURB-65、PSIのいずれかによる重症度評価の他、院内肺炎/NHCAPについては誤嚥の危険因子、耐性菌の危険 因子を評価することが推奨された。
門田氏によると耐性菌の危険因子評価推奨の根拠とされたのは国内の2報の論文。両項目で重複していた項目などを参考に、(1)過去90日以内の経静脈的抗菌薬の使用歴、(2)過去90日以内に2日以上の入院歴、(3)免疫抑制状態、(4)活動性の低下(PS≧3、バーゼル指数<50、歩行不能、経管栄養または中心静脈栄養法)――のうち、2項目以上を「耐性菌の高リスク群」と判定する。
院内肺炎/NHCAPでは敗血症、重症度、耐性菌リスクに基づくエンピリック治療方針を提示。敗血症がなく、軽症、耐性菌リスクがなければescalation治療(狭域抗菌薬を使用し、全身状態の改善が見られない場合に、必要に応じて広域抗菌薬への変更を考慮する治療)を、敗血症があり、重症度が高く、耐性菌リスクがある場合にはde-escalation多剤治療(広域抗菌薬で初期治療を開始し、全身状態の改善を確認し、原因菌を同定し感受性を確認した上で可能であれば狭域抗菌薬への変更を考慮する治療)を行うよう推奨している。