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富山で口腔がん検診 市医師会 認知度低く受診低迷

富山市医師会は、全国でも珍しい口腔(こうくう)がん検診を始めた。他の部位のがんに比べ認知度が低く、検診の周知が進まないこともあって、開始した7月から10月末までの受診者数は89人と低迷している。口腔がんは年齢に関係なく発症するため、市医師会は早期発見へ受診を呼び掛けている。

 口腔がんは喫煙や過度の飲酒、慢性的な舌への刺激などで発症しやすくなる。国立がんセンターの調査によると、国内の患者数は2015年で約1万9500人となっている。死亡率は46・1%と、がん全体で10番目に高く、現在も上昇傾向にある。一方、半年に一度、口腔がんの検査が義務づけられている米国では、死亡率が19・1%に抑えられている。

 富山市医師会から依頼を受けた同市歯科医師会が、口腔外科専門医を派遣し、同市経堂にある健康管理センターで毎週水、金曜と、不定期で日曜に6400円(税別)で検診を実施している。市医師会によると、全国では長野赤十字病院を皮切りに始めた長野県に続き、2例目となる。

 診察は最初に口内全体をレントゲンで撮影した後、その写真を元に専門医が視診、触診して、がんやがんになり得る病変を探す。市医師会では、これまでに受診した89人のうち、1人に口腔がんの前段階とみられる病変が見つかった。

 全国で口腔がん検診が普及しない要因について、市医師会の津幡拓総務課長は、導入する際の費用を挙げる。レントゲン撮影機器や画像をパソコンに転送するための回線などを合わせて約800~900万円かかる。胃がんや肺がんに比べると認知度が低いため、取り組みが進まないという。

 しかし、口腔外科の専門医の一人で、元県立中央病院歯科・口腔外科部長の横林康男医師(65)は「専門医が診察すれば、口腔がんは早期に見つかりやすい」と指摘する。口腔がんの症状としては▽食べ物や飲み物がしみる▽舌や粘膜のしこりがある▽なかなか口内炎が治らない―などがあり「初期の段階では、口内炎だと勘違いして症状を見逃しやすい」と話す。

 早期発見ができれば、手術は部分切除で、費用も20万円ほどで済む。横林医師は「より多くの人に健診を受けてもらい、県内での死亡率を低くしたい」と話した。