県保険医協会が県内すべての小中学校、高校、特別支援学校624校の児童生徒の口腔(こうくう)状態を調査したアンケートで、回答した295校のうち31・2%の92校に10本以上の虫歯などがある「口腔崩壊」の子どもがいることが28日、分かった。口腔崩壊の子どもの家庭環境について「経済的困難」を挙げた学校が37%に上り、同協会の黒木正也副会長は「貧困やネグレクト(育児放棄)などが口腔崩壊の要因となっているとみられる」と指摘した。
アンケートは9月に用紙を送付して実施し、学校での歯科検診を基に答えてもらった。同協会によると、口腔崩壊は、虫歯が10本以上あったり、根っこしか残っていないような未処置の歯が何本もあったりして、咀嚼(そしゃく)が困難な状態を指すという。本年度の歯科検診では、回答した295校のうち92校の214人が口腔崩壊だった。
口腔崩壊の子どもの家庭環境について複数回答で尋ねたところ、「保護者の健康への理解不足」が最多の53・3%で、次いで「経済的困難」が37%だった。また「共働き」が35・9%、「ひとり親」も30・4%と高く、時間的な余裕がないことも関連しているという。
自由記述では「乳歯の虫歯が10本以上。十分に咀嚼できず、給食を食べるのに時間がかかっている」「父子家庭。生活環境も身なりも衛生的ではなく、父親とコンタクトをとることが困難」「保護者の中で歯の健康に対する優先順位が低い」などの報告があった。
一方、回答した295校で昨年度歯科検診を受けた児童生徒6万6803人のうち、37%の2万4703人が虫歯などで受診が必要と診断された。このうち昨年度中に受診しなかったのは1万4601人で半数を超えた。未受診は年齢が上がるごとに高くなり、小学生は47・1%、中学生は62・6%、高校生は77・8%だった。部活や塾で忙しくなることが関係しているとみられる。特別支援学校は58・4%だった。
黒木副会長は「虫歯は生活習慣と密接に関係している。子どもの歯を守るため社会問題と認識して予防に努めたい」と話している。