記事一覧

口臭、気になりますか?

口臭の原因と対策は――。亀山さんによると、9割以上が口の中の汚れや、歯周病などの病気によるものという。

 まず、年を重ねると、抗菌作用のある唾液が高齢化で減少する傾向がある。唾液の減少は、ストレスによる口の乾きや花粉症による鼻水を抑える薬でも起きる。規則正しい生活でストレスをためないことが大切であり、口の中が乾燥しないように注意したい。また、入れ歯をしている人はきちんと手入れをすることが大切だ。

 ニンニクやネギ、アルコールなどの臭いは、いずれ消えていくので健康に深刻な影響を与えることはないが、病気による口臭には注意が必要だ。歯周病やむし歯、歯垢(しこう)、歯石のほか、細菌や食べかすなどの塊が舌に付着して白っぽく汚れる舌苔(ぜったい)などが原因に挙げられる。鼻やのど、肺や胃などの病気が原因になることもあるが、全体の1割以下に過ぎない。

 予防のためには、歯周病やむし歯などを治療し、正しい歯磨きや、舌苔を落とすための舌磨きで口の中の清潔を保つ必要がある。

 「胃が悪くなると口臭が強くなる」と考える人は多いが、亀山さんは「食道と胃の境界は普段、閉じられているので、胃の病気が原因で口臭が発生することはほとんどない」と指摘する。

 不快な臭いの正体は、主に揮発性硫黄化合物(VSC)と呼ばれる成分だ。新陳代謝ではがれた粘膜の上皮や赤血球、白血球、細菌の死骸などのたんぱく質を、口の中の細菌が分解したときに発生する。VSCには硫化水素(卵が腐った臭い)、メチルメルカプタン(魚や野菜が腐ったような臭い)、ジメチルサルファイド(生ゴミのような臭い)の主に三つのガスがあり、それが混ざり合って独特の臭いを醸し出す。

 ところで、自分で口臭の有無をチェックする有効な手段はあるのだろうか。家電量販店などでは簡易型の口臭測定器が数千円程度で売られている。健康計測機器メーカー「タニタ」(本社・東京)は、03年に口臭測定器の販売を始め、これまでに約80万個を売り上げた。現在販売しているのは4代目の機器で、息を吹きかけると6段階で臭いの強さを判定し、光の色などで示す。同社ライフソリューション事業部企画課の久米川真弓さんは「人に会う前に気軽にチェックすれば、日常生活での指針になります。ただし、臭いの強さを測る機器なので、その性能を理解したうえで活用してほしい」。

 悪臭に限らず、ミントの強い香りや歯磨きした直後には、ギョーザやたばこと同じくらい大きく反応するからだ。久米川さんは「普段しっかり歯磨きをしていても、口の臭いが気になる場合は歯科医院や口臭外来を訪れ、専門家に相談してほしい」と話す。その際、注意が必要なのは、口臭の治療は基本的に健康保険が適用されず、全額自己負担となることだ。あらかじめ費用などの問い合わせをしておくと安心だ。

 ドラッグストアでは手軽な口臭予防対策としてガムやキャンディーなどが売られている。前出の亀山さんは「臭いを一時的に隠したり、精神的に安定をもたらしたりする効果はありますが、実は唾液が増えることによる効果が一番高いのではないでしょうか」と指摘する。

 同じ臭いをかいでいると鼻が慣れてしまう。自分で口臭に気づきにくいのはそのためだ。だから、「自分はくさいかも」と人を不安にさせる。でも、「心配しすぎるのは精神的にもよくありません」と亀山さん。口臭は誰にでも少なからずあるということを理解して付き合っていきた