かむ力「咬合力(こうごうりょく)」が強い人は俊敏であることを、ばんどう歯科医院(金沢市)の坂東陽月(ようげつ)院長らの研究グループが11日までに、バドミントンのジュニア選手への調査で明らかにした。かむ力が強い選手ほど敏しょう性と瞬発力が優れ、かむ力と運動能力の関連を科学的に示した。坂東院長はスポーツに励む子どもや保護者、コーチに対し、競技力向上には口腔(こうくう)ケアにも気を配る必要があると呼び掛けている。
研究グループは、バドミントンの日本代表候補であるU16(16歳以下)の男子22人と女子24人、U19(19歳以下)の男子26人と女子26人を調査対象に選定。各選手の咬合力と、腹筋運動や反復横跳び、縄跳び、50メートル走、立ち5段跳びの成績との関連を分析した。
その結果、U19で咬合力の強い選手ほど、敏しょう性を示す反復横跳び、瞬発力を示す立ち5段跳びの成績が特に良く、強い関連性が示された。かむ力が脳を刺激し、反復横跳びや立ち5段跳びに必要な筋力を生み出すのにつながったとみられる。
年代別の咬合力の比較では、男子U19が平均750ニュートン(ニュートンは力の単位)と、同U16の同510ニュートンの1・5倍強く、反復横跳び(20秒間)はU19が平均100回とU16の73回の1・4倍で、咬合力と敏しょう性の関連がうかがえた。
咬合力は、成人男性で500~600ニュートン、成人女性で300~400ニュートンとされる。虫歯や歯周病があったり、歯並びが悪かったりすると低くなる。坂東院長は歯磨きなど日常の手入れに加え、かかりつけの歯科医院を定期的に受診し、口の環境を正常に保つことが必要だと指摘している。
研究は整形外科・形成外科医院「北山クリニック」(金沢市)の北山吉明院長、日本歯科大新潟生命歯学部の高橋睦准教授と進めた。北山院長が日本小学生バドミントン連盟の副会長・医科学研究部長、坂東院長と高橋准教授が研究部員であり、バドミントン選手を研究対象にした。
研究成果は日本スポーツ歯科医学会の雑誌「スポーツ歯学」に発表し、論文奨励賞に選ばれた。学会で表彰されるのは大学の研究者や大学病院の歯科医師が中心で、坂東院長のような開業医が論文の筆頭著者となって表彰されたのは初めてのケースという。
日本オリンピック委員会(JOC)強化スタッフ・医科学スタッフでもある坂東院長は「東京五輪に向けてジュニア選手の強化・育成を進める際には口腔環境を整えるのが重要になってくる」と強調した。