獨協医大口腔(こうくう)外科の川又均(かわまたひとし)教授らの研究チームは、口の中にできる扁平(へんぺい)上皮がんに「唾液腺(だえきせん)型」と「粘膜型」の二つの型があり、遺伝子解析で識別できることを突き止めた。治療法の選択に活用できるという。国際対がん連合(UICC)の機関誌「インターナショナルジャーナル オブキャンサー」の電子版に掲載された。
国内の口腔がん発症者は年間約7千人で、全がんに占める割合は1~2%とされる。口腔がんの大半を占めるのが扁平上皮がんで、舌や歯肉、上顎などさまざまな部位にできる。
「口の粘膜には小さな唾液腺が3千個くらい張り付いて、唾液を作っている。以前から、口腔扁平上皮がんの中には唾液腺からできるものがあるらしいと推測されてきた」(川又教授)が、明確には証明されていなかった。
川又教授らが着目したのは、口腔扁平上皮がんの遺伝子発現。人間の3万を超える遺伝子断片を貼り付けたプレートで組織の遺伝子情報を解析する方法「マイクロアレイ」を用いて計173人分を調べたところ、発現傾向が「唾液腺型」と「粘膜型」の二つの型に分かれることが判明した。
二つの型は見た目や組織像では判別できないが、九つの特徴的な遺伝子によって識別できることも発見した。
川又教授らはこうした研究成果を基に、遺伝子断片を増幅させる「PCR法」で過去に治療した66人を調査。唾液腺由来と推察された12人は放射線や抗がん剤などの治療が効きにくく、リンパ節への転移率が高いことが分かった。60カ月後の生存率も、粘膜由来の80%に対し、唾液腺由来は50%と低かった。
「唾液腺由来だと分かれば切除手術を優先し、他への転移も警戒することができる」と川又教授。予後の改善につながると期待する。