あたなは、立派なやぶ医者です―。愛南町一本松の松本クリニックの松本毅院長(47)がこのほど、兵庫県養父市が主催する「第7回やぶ医者大賞」に選ばれた。下手な医者ということ? しかし、松本院長は「素直にうれしい」と受賞を喜ぶ。これいかに。
実はやぶ医者の語源は、かつての養父地域にいた名医のことだったという説がある。市はへき地医療に尽力する若手医師をたたえようと2014年に「やぶ医者大賞」を創設した。
市によると、江戸時代に名医の評判に便乗する偽者が続出したため「腕の悪い医者」という俗称として現在の意味で用いられるようになったという。
受賞理由は、24時間365日対応の訪問診療と、介護士やケアマネジャーら多業種で患者の情報を共有できる町内共通のICT(情報通信技術)ネットワークを構築したこと。地域全体で常時見守られているという安心と信頼感が早期治療を促し、患者の快癒などにつながっているとの評価を受けた。
松本院長は地域医療に携わって10年。「自分一人では無理。在宅で支える家族、ヘルパー、介護士、国保一本松病院や県立南宇和病院など、地域みんなで支えているし、自分自身が支えられ、助けられている」と周囲への感謝を口にする。「受賞したからには、本来の『やぶ医者』として一人一人とじっくり丁寧に向き合う地域医療に取り組み、賞や語源も広めていきたい」と笑顔で決意を語った。