新型コロナウイルスが蔓延(まんえん)する北海道に緊急事態宣言が発令されてから25日で10日が過ぎた。道は感染者が多い札幌市を中心に飲食店の休業や外出自粛の強化など強い措置を講じているが、今も感染者数は全国最多レベルが続く。なぜなのか。道内の新型コロナ感染状況に詳しい札幌医科大の横田伸一教授(微生物学)に聞いた。
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――北海道内の新型コロナ新規感染者数が毎日ほぼ600~700人と全国最多規模の人数で推移しています。感染者数が減らないのはなぜでしょうか。
「感染してから感染が明らかになるまでには、発症までの潜伏期(約5日)や発症後の検査と診断に要する時間の関係でタイムラグが生じます。一般的には現時点の感染状況は約2週間後に見えてくると言われています。従って現在の感染状況は、2週間前の(新型コロナ対応の特別措置法に基づく)『まん延防止等重点措置期間』の状況が見えつつある時期と認識しています。確かに感染者数の増加傾向はいまだに続いていますが、大型連休明け後しばらくの間に見られた急激な増加は止まっている状態にあります。これがいつ減少に転じていくのか、注視しているところです」
「札幌市の感染状況は、感染者の絶対数もさることながら、今月12~14日は感染経路不明の割合が80%以上で陽性率も非常に高く、見た目以上に感染拡大が起きていました。感染経路も追跡できていませんでした。現在、こうした最悪の状況は、徐々にですが改善傾向にあります」
■人流の抑制はあくまで「手段」
――道内は16日から緊急事態宣言下に置かれ、札幌市を中心に飲食店の休業要請や外出自粛強化など強い措置が取られています。現在の対策についての妥当性をどう考えますか。
「感染症対策の基本は人と人との接触を減らすことです。個々人の意識や行動を変えることが最も重要な対策であることには変わりありません。感染力がより強い変異ウイルスの影響もありますが、感染拡大の勢いが止まらない状況下では、人流を抑えるという対策を講じざるを得ません。ただ、人流の抑制はあくまでも手段であって、個々人の意識や行動の変容という目的に照らした場合、現在の達成度は、評価することはできません。例えば、飲食店の休業や時短がなされていたとしても、公園や路上でマスクなしの会話や飲み会が行われれば、行政が呼びかけている対策は無意味なものになってしまいます。個々人の感染対策の意識づけが足りているかどうかは疑問です」2021年5月26日 (水)配信朝日新聞