米国で宇宙旅行サービスの実現を目指す動きが相次いでいます。
英起業家のリチャード・ブランソン氏が7月11日、自身で創業した米ヴァー
ジン・ギャラクティックの機体で宇宙空間に到達。米アマゾン・ドット・コム
創業者のジェフ・ベゾス氏も2000年に設立した米ブルーオリジンの宇宙船での
宇宙飛行に成功しました。価格は1人2000万円台が想定され、宇宙に行くのが
「夢」ではない時代が訪れようとしています。
ヴァージンが提供する宇宙旅行の価格は25万ドル(約2800万円)を計画し、
2022年の運航開始を目指しています。上空で母船から切り離した宇宙船が
ロケットエンジンで宇宙へ向かい、地上と宇宙の「境界」とされる高度100キロ
メートル付近に到達後、即座に地上に戻ってくる飛行方式です。世界で約600人
が予約していますが、今は受け付けを中断している状況です。
ヴァージンが翼を備える飛行機のような宇宙船を使うのに対し、ブルーオリ
ジンは垂直に離陸するロケットからカプセルを切り離して宇宙に向かいます。
ヴァージンが11日に到達したのは高度約86キロメートル。それに対して「100
キロメートルまで到達できる」「飛行機サイズの窓ではなく、107センチメー
トル×71センチメートルの大きな窓を備えている」と優位性を強調しています。
価格は未定ですが、20万~30万ドル(約2200万~3300万円)になると推定され
ています。
ベゾス氏やブランソン氏が目指す高度100キロメートルへの宇宙の旅は、従
来の高度400キロメートルの国際宇宙ステーション(ISS)への滞在費用が数十
億円とされるのに比べると、格段に行きやすい価格設定になっています。
2021年は「宇宙旅行元年」になる可能性がありますが、その先には月面など
のより遠い領域を巡るビジネスの戦いや、さらには宇宙機を都市間の高速移動
に応用する構想もあります。
米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)率いるスペースXは今秋
に高度540キロメートルへの宇宙旅行、2023年には地球から約38万キロメート
ル離れた月を周回する旅行を計画しています。月を周回する旅程は5日23時間
で、ヴァージンやブルーオリジンの高度100キロメートルよりも本格的な旅行
です。また、世界中のあらゆる場所を1時間以内で移動できるようにする(ロ
ンドン→ニューヨーク:29分、ニューヨーク→パリ:30分等)との計画も掲げ
ています。
宇宙空間の移動は、リスクを伴うと共に、巨大な市場を生み出す可能性を秘
めています。起業家による宇宙を巡る戦いは、今後さらに激しくなりそうです。