マイナンバーカードと健康保険証を一体化した「マイナ保険証」の導入について、県保険医協会が会員(開業医)に実施したアンケートによると、導入・運用に「不安がある」と答えた人が全体の8割を超え、システム未導入の場合、22年度末までに導入できるかどうか「分からない」と回答した人は6割に上った。
協会によると、マイナ保険証は医療機関の受付で専用機器にカードを読み取らせると、健康保険の資格を確認できる仕組み。昨年10月から本格運用が始まった。医療機関は読み取り機器や専用の端末を導入し、電子カルテなど既存のシステムに接続しなければならない。
政府は6月、経済財政運営の指針「骨太方針」で、医療機関などに2023年4月からマイナ保険証に対応するシステムを導入するよう原則義務付けた。このため、協会は県内各機関の導入状況などを把握しようと8月31日~9月10日にアンケートを実施。対象の医師や歯科医師1458人中579人が回答した。
導入・運用に「不安、不満がある」としたのは495人(85%)。理由として「利用患者が少ない」が68%で最も多く、「窓口業務の増加」「院内でのカード紛失や情報漏えいの責任を問われる」と続いた。
システムを導入済みと答えたのは179人で、全体の3割にとどまった。導入を準備、検討中としたのは336人。うち、59%が「期限までに導入できるか現時点では分からない」と答え、「導入できる見込み」としたのは35%だった。
自由意見では、「コロナ診療で疲れ果て、導入を考える余裕がない」として、期限延長を強く求める声が上がった。「へき地ではネットワーク環境がない」「維持費が厳しい」といった環境整備やコストを不安視する意見もあった。協会は9月28日、岸田文雄首相らに対し、カード普及までの義務化の猶予や、保険証の発行継続などを求める要請書を提出した。
木村孝文会長は「自分でマイナ保険証の手続きができないと訴える高齢者が多く、受診控えにつながるのではないか」と懸念。「現場は機器の導入が間に合わないなど混乱している。理解が十分に広がってから取り組むべきだ」と訴えた。