新型コロナウイルス感染症の法的位置付けについて、政府が来春にも「5類」に引き下げる方向で検討していることが分かった。背景には、重症化率や致死率の低下がある。5類へ移行すれば、法に基づいた外出自粛などの措置も廃止される見通しだ。ただ、オミクロン株は極めて感染力が強く、一気にインフルエンザと同等の対策に緩和すると死者数のさらなる増加を招く恐れもある。政府は医療体制などは一定程度維持しながら慎重に個別の対策の見直しを進める方針。
▽発達に懸念
新型コロナの重症度は、オミクロン株に置き換わり、多くの人が感染やワクチン接種で免疫を獲得したことで、発生初期よりも低下してきた。
厚生労働省が21日に公表した分析結果によると、新型コロナのオミクロン株派生型BA・5が流行した7~8月の「第7波」では、感染者数に占める死者数の割合が60~70代で0・18%、80代以上で1・69%だった。デルタ株が流行した昨夏の第5波だけでなく、オミクロン株による1~2月の第6波と比べても重症化率、致死率ともに大幅に減少していた。
自治体からは「現在の法的位置付けが『医療アクセス』の障壁になっている可能性がある」(大阪府)、「子どもの人間関係形成能力の発達に懸念がある。5類相当に早急に見直すことを要望する」(茨城県)などとの意見が出ていた。
▽インフルと異なる
新型コロナの見かけ上の致死率はインフルエンザと変わらなくなっていることから、同等とみなす人もいるが、厚労省専門家組織のメンバーらは「データの取り方が異なり比較できない」と否定的だ。感染力は強く、ワクチンや感染で獲得した免疫をかいくぐる能力が高まっているため「インフルエンザとは異なる特徴を持つ感染症になってきている」と強調する。
このため厚労省幹部は「5類になったとしても患者は今後も一定数発生するとの前提で、医療提供体制は一定程度確保する形になるのではないか」と説明する。現在行われている患者や医療体制への支援の多くは5類に引き下げても維持することは可能という。