コメダ珈琲店を運営する「コメダ」(名古屋市)は、のみ込む力が弱い嚥下(えんげ)障害に悩む人にもコーヒーを楽しんでもらおうと、とろみがついたインスタントの「とろみコーヒー」の販売を始めた。ゆっくりのみ込めてむせにくいのが特長で、2年半かけてコク深い味わいを実現、「『新食感』を一般の人にも楽しんでほしい」としている。
同社マーケティング本部の伊藤弥生(いとう・やよい)本部長によると、新型コロナウイルス感染が広がり高齢客が減った2020年春に家庭向け商品を考えていたところ、「とろみ粉末を混ぜたコーヒーは介護施設の利用者に『おいしくない』と避けられてしまう」と相談があり、開発を決めた。
「コメダで出す以上はおいしいものを、と役員からハッパをかけられた」と伊藤さん。10種類の増粘剤と、コーヒー豆のブレンド5、6種類から、さまざまな組み合わせを試した。とろみを強めると味が薄くなるためバランスに腐心し、昨年11月に商品化した。
監修した朝日大病院の谷口裕重(たにぐち・ひろしげ)准教授(摂食嚥下リハビリテーション学分野)によると、介護食は味が二の次になるものが少なくないといい「安全や機能性と同様に、誰がのんでもおいしいと思えることが重要。のむことがのどの機能回復につながる」と強調する。
同社のオンラインショップで、15杯1900円で販売。谷口准教授は「重度の嚥下障害がある患者が、毎日のんでいるとうれしそうに話してくれた」という。伊藤さんによると、冷めにくくホイップクリームとの相性も抜群。「嗜好(しこう)品やおいしいものは生きる喜びにつながる。今後も味を磨きたい」と話している。