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「座りすぎ」が及ぼす身体への悪影響

 昨年の12月、京都府立医大の富田仁美研究員(内分泌・乳腺外科)などの研究
チームが行った大規模疫学調査結果から、驚くべき事実が発表されました。それは
座っている時間が1日7時間以上の女性は、7時間未満の女性に比べて乳がんを
発症するリスクが36%も上昇するというものです。筋肉を動かさないことで、
血行が悪くなることなどが影響していると考えられています。座りっぱなしに
よる運動不足の解消には、余暇にまとめて運動するよりも普段から座っている
時間を短くし、こまめに運動することが効果的であると富田氏は話しています。
 また、オーストラリアのシドニー大学の研究グループが、約2年10ヵ月に渡って
座っている時間の違いによる死亡率を調査した結果(45歳以上の22万人を対象)、
1日トータルで11時間以上の人は、4時間未満の人に比べて、死亡率が1.4倍も
高くなることが分かりました。座っている時間が長い人ほど、血行不良と代謝の
低下などにより死亡リスクが増加すると推察されています。重要なポイントは、
例えば1週間で150分程度、普通のスピードで歩く以上の運動を行ったとしても、
座りすぎを継続していれば、このような健康への悪影響は十分に減らないという点
です。とにかく座りすぎを意識してやめることが、最善の対処法であると示して
います。
 そもそも日本人は世界的にも座っている時間が長く、成人では1日平均7時間
(中央値)と言われています。世界保健機関(WHO)の健康づくりの指針である
「身体活動ガイドライン」にも座位行動がタイトルに新たに加えられ、座りすぎ
対策に積極的に取り組む重要性を強調しています。日本でも厚生労働省によって
まとめられた「身体活動・座位行動ガイドライン」においても、座りっぱなしに
対して積極的な対策を呼びかけています。職場でも学校でも座り過ぎによる健康
リスクを十分に理解し、行動変容を促すことこそ、いま社会に求められています。