歯を失う二大原因の一つの歯周病。軽度だと痛みがなく、知らず知らずに進行している人も多い。口の中の健康だけでなく、進行すると全身にさまざまな影響を及ぼすことも。歯科医師で福井県歯科医師会広報部の前川雄紀さんは「たかが歯周病と思わず、しっかり治療や予防をしてほしい」と話す。4月4日は歯周病予防デー。
歯周病は細菌の塊の歯垢(しこう)(プラーク)が原因。歯と歯茎の間の溝に歯垢がたまると、歯垢に存在する歯周病菌が毒素を出し、歯茎に炎症を起こして溝が深くなっていく。こうしてできた「歯周ポケット」は歯垢がたまりやすく、炎症がひどくなって溝がより深くなっていく。進行すると歯槽骨(歯を支えるあごの骨の一部)が溶け、歯が抜けることもある。痛みがある場合は中程度まで進行しているケースが多い。厚生労働省の調査によると、30代以上の3人に2人で歯茎に何らかの違和感があり、45歳以上では半数に歯周病の症状があるという。また、10代後半から20代で発症し、数年で一気に進行する侵襲性歯周炎もある。喫煙者は、歯茎が出血しにくかったり、腫れにくかったりするため歯周病に気付きにくく、症状も悪化しやすいという。
治療は、歯垢や、歯垢が石灰化して硬くなった歯石を取り除くことがメイン。精密検査後、基本治療として歯の表面や歯周ポケットにある歯石を除去し、歯垢のない口腔(こうくう)環境にするため歯みがき指導を行う。基本治療で改善しなかったり、歯周ポケットが深くて歯石を除去できなかったりした場合は、歯茎を切開して歯石を取り除く外科手術を行う。また、特殊な薬剤で欠損した骨を再生することもある。症状が改善すれば定期的なメンテナンスに移る。
歯周病は他の疾患との関係も深い。歯周病菌は血糖値をコントロールするインスリンの働きを悪くし、糖尿病を悪化させる。ほかにも動脈硬化のリスクが2~3倍、妊婦は低体重児や早産のリスクが7~8倍高まるといわれる。妊娠中は女性ホルモンの関係で歯周病になりやすくなるので注意しなければならない。アルツハイマー病の原因物質のアミロイドベータがたまりやすくなるという研究データもあるという。