代表的な認知症であるアルツハイマー病の原因の一つとして、タウというタンパク質の塊が脳内に蓄積することが知られている。また、高齢者では歯がどのくらい残っているかなど、口腔内の環境が認知症と関わりがあることも示されているが、その詳細は不明だった。
東京歯科大らの研究チームは、歯が抜けて根元の神経が損傷されると、脳の深部の脳幹という所にある神経のおおもとが死んでしまうことに着目した。その理由は、加齢に伴って脳幹からタウ(タンパク質)の塊が蓄積し始めることだった。陽電子放出断層撮影法(PET)という画像検査により、アルツハイマー病患者のタウ蓄積を調べたところ、残っている歯の本数が少ない人ほど脳幹のタウ蓄積が多いことが判明した。さらに脳幹のタウ蓄積が多い人ほど、記憶の出し入れに関わる海馬という脳領域のタウ蓄積も多いことが明らかになり、歯を失うことがアルツハイマー病のタウ蓄積を加速して、発症や進行に関わる可能性が示さた。
研究の結論として、口腔内をケアして歯の喪失を防ぐことは、アルツハイマー病の発症や進行を食い止めることにつながる証拠を、病態の観点から得ることができた。 本成果は2023年11月21日付で、ジャーナル誌『Journal of Alzheimer’s Disease』に研究論文として掲載された。
【歯科通信】