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「開業医誘致に補助金」数千万円から1億円超も

医師の地域偏在が叫ばれて久しい。地域枠や専攻医のシーリングなど、若い医師を地方へと誘うべく全国レベルでも対策は行われているが、大都市への集中傾向を押しとどめることは難しい。規制的な手法が議論されたこともあるが、自由開業制を基本とする日本の医療制度では、導入へのハードルが高い。

 医師不足に悩む地方自治体も手をこまねいているわけではない。最近、活発化しているのが補助金を出し、開業医の誘致を図る自治体だ。新規開業にかかる費用への補助金は1件で1億円を超えるケースもあり、特に不足する産婦人科や小児科に診療科を限定している自治体もある。そうした各地の動きを追った。【なお、本稿は網羅的な調査ではない。また記事中の補助金には諸条件があり、詳細は当該自治体に要確認】

北海道名寄市、10月開業の内科診療所に補助

 北海道名寄市では6月定例議会で、建設中の新たな内科診療所(10月1日開業予定)への補助金計5350万円を盛り込んだ補正予算が可決され、今後具体的な手続きが進むことになる。制度について名寄市保健センターの担当者は「2017年頃に市内で(診療所の)閉院が続いたことがあり、開業医誘致条例を制定した」と話しており、今回が第1号となる。今年度までは内科に限って募集していたが、今後は診療科を限らず市内の医療体制を勘案してその都度検討するという。

 宮城県栗原市では施設整備にかかる費用として2分の1を助成。産婦人科は上限1億5000万円、小児科は上限1億円で、他に土地取得経費2000万円も補助する破格の条件を設定している。市民生活部健康推進課の担当者は、「産婦人科は市内になく、小児科は1軒あるが市域が広いため不便さもあった」と話す。2023年に制度を利用して小児科診療所が1軒開業した。静岡県湖西市も産婦人科に2分の1、1億円を上限に補助するとともに、市有地を10年間無償で貸し付けている。