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寿命の地域格差30年で拡大 都道府県間最大2・9年に 医療、生活習慣影響か 慶応大など分析

1990~2021年の約30年間で、日本の平均寿命は5・8年延びて85・2歳となった一方、47都道府県で最長と最短の差が拡大したとの分析結果を慶応大などのチームがまとめ、21日付の英医学誌に発表した。90年に2・3年だった差が21年には2・9年に広がっていた。

 延びが大きかった地域では、医療へのアクセスや生活習慣の改善、健康を支える仕組み作りなどを積極的に進めたとみられる。チームの野村周平(のむら・しゅうへい)慶応大特任教授(国際保健)は「そうした地域の取り組みを共有することで、格差是正につながる可能性がある」としている。

 チームは国の人口動態統計などのデータを分析。平均寿命は全都道府県で延びたが、小数第2位を四捨五入した90年の平均寿命が最長の沖縄(80・6歳)と最短の大阪(78・2歳)の差が2・3年だったのに対し、21年では最長の滋賀(86・3歳)と最短の青森(83・4歳)の間に2・9年の差があった。

 健康上の問題がなく生活できる「健康寿命」と平均寿命との差も、90年に9・9年だったのが、21年には11・3年に拡大した。野村さんは高齢化が一因とみており「『健康な長寿』の実現が課題だ」と指摘した。

 異なる時期や地域間の比較を可能にするため、人口の年齢構成の違いを考慮して補正した死亡率を算出すると、約30年の間に全国の死亡率は41・2%減少していた。脳卒中や虚血性心疾患による死亡率の低下が影響したとみられる。減少幅が最も大きかったのは滋賀で49%、最も小さかったのは沖縄で29・1%だった。

 病気ごとの解析では、誤嚥(ごえん)性肺炎などを引き起こして死亡した認知症の人が、21年は10万人当たり135・3人で、90年の29・38人から大きく増加した。高齢化が主な要因で、21年に114・9人だった脳卒中や、96・5人だった虚血性心疾患を上回った。