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口のケアと健康:/上 がん治療、院内歯科と連携

口とがん治療。ピンとこないかもしれないが、近年の調査研究で、口腔(こうくう)ケアとがんを含めた全身の健康には密接な関係があることが分かってきている。だが病気になると、歯や口のことは二の次になりがちだ。医療や介護の現場での取り組みを、2回に分けて報告する。

 ◇術後の合併症予防などに効果

 「ランマークって書いてありますけど、歯科は通してますか?」。大阪国際がんセンター(大阪市)で週1回、主に口やのどのがんを扱う頭頸(とうけい)部外科の治療方針を話し合うカンファレンスで、歯科の石橋美樹副部長が担当医に尋ねた。

 「ランマーク」は、骨に転移したがんの進行を防ぐための薬剤だ。これを投与した後に抜歯をすると、あごの骨が腐る危険がある。投与前に歯の状態をチェックし、必要なら先に抜歯しておくのが望ましい。

 口腔外科専門医資格を持つ石橋副部長と歯科衛生士2人という陣容の歯科が院内に置かれたのは、昨年4月。頭頸部外科の藤井隆主任部長は「設置効果は絶大。放射線治療や手術などの際には口の状態をしっかり管理することが大切だが、急な対応も可能になった」と話す。何よりがん治療チームの一員として、患者の情報を共有できるのが最大のメリットという。

 歯科の関わりは、頭頸部のがんだけではない。全身麻酔手術では気管内にチューブを挿入するが、口の中の汚れが肺に押し込まれると肺炎の原因になる。抗がん剤治療をすると、口の中が荒れて食事が取りにくくなるほか、抵抗力が落ちて虫歯や親知らずなどから菌が入り込み、命に関わることもある。

 院内歯科が置かれる前は、手術前に歯科治療の必要性の高い患者だけ近隣の歯科医院に行ってもらっていたが、予約や治療に時間がかかると、がん治療の開始が遅れる要因にもなっていた。「一番不利益を被るのは患者さん。口が原因でがん治療が止まることはあってはならない」と石橋副部長は話す。

 センターの看護師は独自に口腔ケアを学んで対応してきたが、2013年にオーラルケアチームが置かれ、看護師、薬剤師と非常勤の歯科衛生士が週1回、肺炎のリスクの高い患者や放射線治療を受けた患者らの病棟巡回を始めた。歯科設置後は、巡回の情報を担当医や石橋副部長も共有し、医科と歯科の連携に万全を期す。

 地域の歯科医との連携にも力を入れる。石橋副部長によると、医科と歯科では、それぞれでは当たり前の略語が通じなかったり、文書だけでは依頼の意図がうまく伝わらなかったりすることがあるという。「在宅に移行した患者を診る地域の歯科医と、病院の医師の橋渡しが必要。つなぐのが病院歯科の役割だ」と話す。

子だくさんの母親は歯を失うリスクが高い?

 伝承童謡の「マザー・グース」でも歌われているように、昔から「子どもが増えると親は歯を失う」といわれてきたが、その科学的な根拠はなかった。そこで、Gabel氏らは今回、欧州27カ国およびイスラエルで実施されている大規模調査Survey of Health, Ageing, and Retirement in Europe(SHARE)のデータを用い、子どもの数と親の欠損歯数との関連について検討した。

 解析対象は、第5回調査(2013年)の対象となった欧州14カ国およびイスラエルの50歳以上の男女3万4,843人(平均年齢67歳)。健康な人には通常、親知らずを含めて32本の歯があるが、対象者では平均10本の歯を欠損していた。

 解析の結果、対象者が高齢になるほど欠損歯が増え、50~65歳の女性では平均6.7本、80歳以上の男性では平均19.3本を欠損していた。また、同じ性別の子どもを2人産んだ後に3人目を産んだ女性では、性別の異なる子どもが2人いる女性と比べて残っている歯の本数が平均4.27本少なかった。一方、男性では子どもの数による歯の欠損への影響は認められなかった。さらに、学歴が高い女性と比べて低い女性では残っている歯が少ない傾向も認められた。

 この結果を踏まえ、Gabel氏らは「妊婦や育児中の女性をターゲットに口腔衛生の維持や歯の健康に良い栄養の摂取、定期的な歯科検診の受診を推進する取り組みを強化することが、合理的な戦略となるのではないか」と指摘している。

 ただし、今回の研究は子どもを3人産んだことが原因で歯を失うという因果関係を証明したものではない。また、特定の家族構成である男女を対象としており、規模も比較的小さいため、Gabel氏らは慎重な解釈を求めている。さらに、女性の歯の欠損に影響する因子が妊娠関連のものなのか、あるいは育児に関連したものなのかについても、今後の研究で明らかにする必要があるとしている。

口臭の原因となる硫化水素を産生する酵素の立体構造と反応機構を解明-岩手医大

岩手医科大学は3月1日、健常者を含め多くの成人で検出される歯周病菌に特有の硫化水素産生酵素「Fn1055」に着目し、この酵素の立体構造と反応機構を明らかにしたと発表した。研究成果は、英科学誌「Biochemical Journal」に掲載されている。

 口腔内の硫化水素濃度と歯周病の進行度の間には高い相関があり、臨床現場では、患者の口腔内の硫化水素濃度を測定し、口臭や歯周病の程度を判定する指標としている。硫化水素は、歯周病菌が作る「硫化水素産生酵素」により、主にシステインというアミノ酸から作られる。これら酵素の反応機構の解明は、口臭や歯周病に関与する硫化水素産生の根本的な理解につながるという。

 研究グループは、「硫化水素産生酵素特異的な阻害剤の開発に寄与すると考えられ、新たな洗口液成分の開発にもつながることが期待される」と述べている。

(医療NEWS 3月6日より)

骨と同じ成分の人工骨を開発 インプラント治療に活用 九州大など

九州大大学院歯学研究院の石川邦夫 教授(生体材料学)らのグループは、骨の主成分である「炭酸アパタイト」と同じ成分の人工骨を世界で初めて開発したと発表した。歯科インプラント用に使える人工骨として昨年12月に薬事承認を得られ、2月21日に国内販売を開始。顎骨欠損部に埋め込めば速やかに骨に置き換わるという。

 研究グループは、カルシウムやナトリウムの化学反応で顆粒(かりゅう)状の炭酸アパタイトを開発。顆粒を骨欠損部に詰め、上皮を縫合するだけで、既存の骨が周辺で新生されるとともに、顆粒そのものも骨に置き換わるという。実際のインプラント治療22症例の全てで骨に置き換わっていた。

(西日本新聞社 3月14日より)

立正大ラグビー部新人にマウスガード 熊谷市医師会

地元の大学ラグビーチームを応援しようと、熊谷市歯科医師会(平井友久会長)が同市にキャンパスがある立正大学ラグビー部新入部員32人のマウスガードを制作した。

 2011年から始まり今回で8回目。5年前に同市に「市民の歯と口の健康を推進する条例」が制定されたことから、全国に先駆け、歯と口の健康を通じて地域住民のスポーツによる健康づくりを支援している。

 部員らは同市宮前町の中村歯科医院(中村直史院長代理)に集合。仁木俊雄さん(仁木矯正歯科)ら7人の歯科医が手分けして歯型を取った。

 マウスガードはスポーツにおける瞬発力を高める効果があるほか、強い衝撃から歯や脳を守る。通常は自費診療だが、条例によりその一部を同市の補助金で賄っている。

 伊東蓮さん(1年)は「このような良い環境でラグビーに専念できることがありがたいです」。森歯科医院の森哲也さん(50)は、「けがなく良いパフォーマンスで地元大学が1部に上がり活躍する姿を見たい」と話した。

旭川市役所内全面禁煙スタート 議会喫煙室は暫定措置

旭川市は本年度から市役所内を全面禁煙とし、庁舎内にたばこの喫煙所を設けない「建物内禁煙」を始めた。市民は歓迎する一方、喫煙家の市議からは議会棟では喫煙が継続できるよう望む声も上がっている。

 市は1日付で総合庁舎6階と第3庁舎2階の喫煙室を廃止。その一方で、建物の外の総合庁舎敷地内の地下駐車場入り口付近に、喫煙用のプレハブ小屋(6平方メートル)を設置した。今月中旬には第3庁舎外の敷地内にも作る。

30年、全都道府県で人口減 市区町村では9割以上 45年までの将来推計

国立社会保障・人口問題研究所は30日、2045年までの都道府県や市区町村別の将来推計人口を発表した。東京や沖縄の人口増は30年まで続くが、その後減少に転じ、全ての都道府県で人口が減っていくと試算。総人口は2千万人減の1億642万1千人となり、秋田が4割以上減るなど東京を除く46道府県で15年よりも少なくなる。市区町村の94・4%で人口が減り、4割以上減るところも40・9%に上った。

 約5年に1度、国勢調査や想定される出生率などを基に地域ごとの推計人口を算出する。近年の出生率の上昇を受け、13年の前回発表と比べて減少ペースは緩和したものの、65歳以上の割合は全ての都道府県で3割を超えるとされ、少子高齢化の傾向は変わらない。

 同研究所は昨年4月、国勢調査などを基に65年の人口を8808万人とする推計を発表。今回発表された推計値の合計はその時に発表された45年の推計人口と合致する。

 今回の推計では、20年以降も増えるのは東京、沖縄だけだが、この2都県も30~35年の間に減少に転じる。前回発表では、全都道府県で減少するのは20~25年とされていたが、時期が10年先延ばしとなった。

 15年人口を100とした場合の45年人口を示す指数をみると、日本全体は83・7(減少率16・3%)。人口減が著しいのは秋田の58・8(同41・2%)。青森の63・0(同37・0%)、山形と高知の68・4(同31・6%)が続いた。増加するのは東京の100・7(増加率0・7%)だけだった。

 大都市圏への流入も進み、総人口に占める割合は東京が12・8%、神奈川が7・8%、大阪が6・9%。4人に1人が住むようになる。

 45年に65歳以上の割合が高くなるのは、秋田の50・1%、青森の46・8%、福島の44・2%。低いのは東京の30・7%、沖縄の31・4%、愛知の33・1%。0~14歳の割合は全国で減り、最少は秋田の7・4%、最高の沖縄でも15・3%にとどまる。

 東京電力福島第1原発事故の影響を受けた福島県内を除く市区町村別では、対象となる1682のうち1588で人口が減少。最も減少率が高い奈良県川上村は人口が5分の1となり、増加率トップの東京都中央区は34・9%増となる。

 人口5千人未満の市区町村は249から1・8倍の444に。65歳以上が半数以上となる自治体は465となり、15年の15から大幅に増える。

 ※将来推計人口

 国勢調査や人口動態統計などのデータから将来の出生率や死亡率を仮定し、日本全体の人口、都道府県別・市区町村別の人口が数十年後にどうなるか、国立社会保障・人口問題研究所がおおむね5年ごとに算出する。社会保障政策や、政府がつくる各種の長期計画の基礎資料となる。

国保料上昇、43%の自治体 公費投入で穴埋め構造残る 都道府県移管、厚労省集計

自営業者らが加入する国民健康保険(国保)の運営主体が4月に市区町村から都道府県に移るのを前に、厚生労働省が市区町村の1人当たり保険料水準の変化を集計したところ、43%の自治体で上がる可能性があることが30日分かった。約54%は下がり、約3%は据え置きとなる。

 制度変更に伴い保険料が急激に上がりかねないと懸念していた自治体も多かったが、移管支援を目的に国が約3400億円の公費を投入するため保険料の伸びは一定程度、抑制される。国保財政は赤字体質で市区町村が独自に穴埋めして帳尻を合わせてきたが、加入者以外も負担する税金を投入する構造は4月以降も残ったままだ。

 都道府県が、管内市区町村の保険料の目安や都道府県に納める「納付金」の1人当たりの金額を2016年度と18年度で比較。2年分の増減幅を1年分に置き換え、厚労省に報告した。北海道と宮城は市町村の増減幅を回答していないため、厚労省は45都府県の1524市区町村をまとめ、発表した。

 保険料水準が上がるのは656市区町村。このうち90%超の601市区町村で上昇幅が3%以内だった。一方、下がるのは54・3%の828市区町村、据え置きは2・6%の40市町村。厚労省は「高齢化や医療の高度化によって医療費は毎年3%程度伸びている。公費で保険料を抑える効果があった」としている。

 実際の保険料額は、今回の保険料水準をもとに、市区町村が6月までに決める。保険料の上昇を抑えるため、独自に市区町村が一般会計などから繰り入れた場合、据え置きや減少となる可能性もある。厚労省によると、16年度の全国の平均保険料は年9万4140円。

 都道府県別の保険料水準の平均は、18都県で上がり、28府県で下がる(北海道は未回答)。最も上がるのは熊本の2・4%増、下がるのは沖縄の8・1%減だった。

 国保は、高齢者や低所得者の割合が多い上、医療費の水準も高く赤字構造となっている。厚労省は、規模の大きい都道府県へ運営を移管し、財政基盤強化を目指している。

 ※国民健康保険

 75歳未満の自営業者や非正規労働者、無職の人ら約3千万人が加入する公的医療保険。加入者の所得水準が低い一方、年齢が高く医療費水準も高いために赤字運営が続く。2016年度の赤字額は1468億円で、穴埋めのため全国の市区町村の一般会計から計2537億円が繰り入れられた。規模を大きくして財政を安定化させる目的で、4月1日に市区町村から都道府県に運営が移管される。保険料徴収や書類交付など住民に身近な業務は、引き続き市区町村が担う。

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