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口から食べられる理想に向かって

上記講演が開催されます。
講師:菊谷 武先生
日時:2017年3月11日(土)14:00~17:00
場所:北海道経済センター
案内HP
http://hokuiryoudaidousou.jimdo.com

金属アレルギー発症原因の解明へ。世界初、マウス実験モデルを確立。

ピアスやネックレス、時計などの装着により起こる金属アレルギー。歯科領域でも詰め物や被せ物、ブリッジ、入れ歯などの金属が原因となり皮膚炎などを引き起こすという症例が多数ある。そんな身近な疾患であるにもかかわらず、その疾患発症メカニズムは解明されていなかった。そんな中、大阪大学大学院薬学研究科の堤康央教授、東阪和馬助教、吉岡靖雄准教授(現 微生物病研究所)、平井敏郎博士らの研究グループは、金属アレルギーの発症において、これまで原因と考えられてきた金属イオンではなく、生体内外で自然発生する金属ナノ粒子が引き金となり発症しえることを発見。マウス実験モデルの確立に成功したと発表した。

インプラント周囲炎の治療法の確立へ。原因となる細菌群集構造を解明。

急速に普及している歯科用インプラントだが、その反面、インプラント周囲炎のトラブルが多発している。その数は治療を受けた患者の4割にものぼるとの報告もある。複合細菌感染症としての病態は歯周炎と類似しているが、インプラント周囲炎の方が進行が早く治療が難しい。口腔内に存在する細菌は培養が難しいものも多く、多くの細菌種がその発症や進行に関わると推測され、インプラント周囲炎の治療法が未だ確立されていないのが現状だ。インプラント周囲炎を引き起こす細菌叢は、歯周炎のそれと比べ、構成する細菌数やその比率、活動性の高い細菌種が異なることが判明。これが、歯周炎と同じ治療法を用いても奏功しない理由の一つであることが考えられるという。インプラント周囲炎に特徴的な細菌の群集構造が明らかになったことで、現行の治療法の見直し、新たな治療の確立につながるのではなだろうか。

脳活動から噛み合わせの違和感を可視化。ODS患者の診断に有効な技術を開発。

明治大学理工学部電気電子生命学科の小野弓絵准教授は、神奈川歯科大学大学院歯学研究科口腔機能修復学講座の玉置勝司教授、宗像源博講師の研究グループと共同で、脳活動からかみ合わせの違和感を可視化し、ODS患者かどうかを精度よく推定する手法を開発した。研究グループは歯を噛み合わせるという行為に対して強い注意が引き起こされるODS患者の特性に着目。脳の活動を計測する近赤外分光法を用いて、歯を噛み合わせた際の能動的な注意によって引き起こされる脳活動を検出。その結果、ODS患者と非ODS患者での違いが明らかとなった。そこで、脳活動波形の変化量からその患者がODS患者であるかないかを判定させる識別器を作成。92.9%の正確さでODS患者を識別することに成功した。

デンタルフロスのう蝕、歯周病予防効果。エビデンスが実証されていないと判明。

う蝕や歯周病の予防に効果があるとされ、歯科業界でも推奨されてきたデンタルフロス。しかし、アメリカAP通信による調査で、その効果を裏付ける十分なエビデンスがないということがわかった。AP通信は過去10年間に実施された25件の研究データについて調査。その結果、どの研究もデンタルフロスの効果を実証するエビデンスが弱く、バイアスが生じている可能性も高いと発表した。

高齢者の新定義「75歳以上」

日本老年学会と日本老年医学会が1月5日、都内で会見し、新たな高齢者の定義を提言。現在「前期高齢者」「後期高齢者」と定義されている65-74歳、75-89歳をそれぞれ「准高齢者」「高齢者」とすることなどを示した。

各種調査で5-10歳の「若返り現象」を確認

 提言の取りまとめに当たり、両学会は2013年に合同ワーキンググループを設立。国の各種統計調査データベースなどを用いて(1)疾病受療率、死亡率、要介護認定の変化、(2)体力・生活機能の変化、(3)知的機能の変化、(4)歯数の変化、(5)国民の意識、(6)社会学的見地―の項目を中心に検討を実施した。それによると、10-20年前と比較して現在の高齢者においては加齢に伴う身体機能変化の出現が5-10年遅れる「若返り現象」が見られていること、従来、高齢者とされてきた65歳以上においても特に65-74歳の前期高齢者では心身の健康が保たれ、活発な社会活動が可能な人がほとんどであるとの知見が得られた。

 会見では、内閣府が2014年度に行った高齢者の日常生活に関する意識調査も紹介。「高齢者とは何歳以上か」との問いに対し、「65歳以上」との回答したのは男女とも5%程度にすぎず、男性では「70歳以上」、女性は「75歳以上」との回答が30%と最多を占め、一般の人の意識も変わりつつあるとの見方を示した。

65-74歳は「准高齢者」

 新たな提言で、両学会は65-74歳(従来の前期高齢者)を「准高齢者」、75-89歳(後期高齢者)を「高齢者」、90歳以上を「超高齢者」と定義するのが妥当との見解を示した。

 提言の背景を説明したWG座長の大内尉義氏(国家公務員共済組合連合会虎の門病院院長)は「“高齢者”の定義の年齢層を引き上げることは、健康長寿延伸の成果と捉えることができる」と指摘。65歳以上を新たに「准高齢者」と定義することが最長寿国日本において元気で活動性の高い年齢層の幅が広がったことへの認知を深める契機となると話した。また、「准高齢者の多くは社会の支え手、モチベーションを持った存在であり、自主的な社会参加をさらに促す契機となれば、社会の支え手を増やすことができる」とも述べ、今後、日本において生産人口減少が加速する実情を踏まえ、国民的な議論が高まることへの期待も示した。

実地臨床への影響は?

 新しい高齢者の定義の実地臨床での捉え方について、日本老年医学会副理事長の秋下雅弘氏(東京大学加齢医学講座教授)は「高齢患者を診療していて感じる問題、行うべき介入が従来の65歳以上を“高齢者”とひとくくりにしていることで色々な矛盾があると感じていた。65-74歳を“准高齢者”とすることで、中年期の延長として生活習慣病を抱えているけれども、まだ脳血管疾患を発症していない、高血圧や糖尿病の治療といった予防介入をしっかり行うべき対象となり得る。そして75歳以上になると、それまでとは少し違った配慮が必要になる。今までの高齢者の分け方を変えることで医療提供の考え方が割とシンプルになるのではないか。例えば、栄養指導の面でもそれまでの制限を中心としたものではなく、75歳以上の方はしっかり栄養を取ってむしろ筋肉が落ちないようにする視点が重要になるというようなことと私は捉えている」と説明した。

 日本老年医学会理事長の楽木宏実氏(大阪大学老年・総合内科学教授)は「医療現場では、現状の65歳という高齢者のカテゴリーを全く無くして診療していいかというと、少なくとも病院に来るような方では難しいと思う。まずは、今回の提言を社会がどう捉えるのか、議論を期待したい」との見方を示した。

歯周病と関節リウマチを関連づける細菌

歯周病と関節リウマチの関連は以前から指摘されていたが、ある特定の細菌によってその関連を説明できる可能性が、新たな研究で示唆された。この発見により関節リウマチの原因も明らかにできる可能性があるという。

 研究著者の1人である米ジョンズ・ホプキンス大学医学部(ボルチモア)のFelipe Andrade氏は、「もしこの知見が正しければ、関節リウマチに対する考え方や治療法はこれまでとは全く異なるものになる」と述べている。

 関節リウマチは過剰な免疫反応による慢性的な関節炎で、関節以外のさまざまな身体システムにも影響を及ぼすことがある。100年以上も前から、関節リウマチ患者に歯周病がみられる確率が高いことが知られており、共通する因子の存在が疑われていた。近年、関節リウマチ患者では歯の数が少ないほど重症度が高い傾向が認められており、歯周病患者は関節リウマチになる確率が2倍であることも報告されていたが、その理由は不明のままであった。

 「一時期までは、関節炎の人は手がよく動かないため歯磨きが十分にできないとも考えられていた」とAndrade氏はいう。近年の仮説では、両方の疾患に細菌が寄与している可能性に焦点が当てられているが、その機序は明らかにされていなかった。

 今回の研究では、関節リウマチ患者の歯肉より採取した約200の検体について、A. actinomycetemcomitansと呼ばれる歯周病関連菌の有無を調べた。関節リウマチ患者のほぼ半数に感染の徴候がみられたのに対し、歯周病も関節リウマチもない集団では11%であった。

 この結果から、歯周病と関節リウマチがいずれもこの細菌に起因している可能性が示される。細菌が歯周病を引き起こした後に一種の副作用として関節の腫れをもたらすか、あるいは逆に歯周病が関節リウマチの副作用であるとも考えられる。

 歯周病と関節リウマチの因果関係を明らかにするにはまだ数十年かかる可能性があるが、それでも、細菌の関与に関する今回の知見は関節リウマチの予防と治療に「いずれ役立つ可能性がある」と、米テキサス大学サウスウエスタン医学部臨床教授のScott Zashin氏は話す。

 同氏によると、細菌を標的とすることは、関節リウマチの発症リスクが高いがまだ症状が出ていない人に特に有用であると考えられるという。Andrade氏は、「この知見は抗生物質が関節リウマチ治療の選択肢となりうることを強く示唆するものだ」と述べている。この研究は「Science Translational Medicine」オンライン版に12月14日掲載された。

嚥下食、雑煮も楽しく 阿知須共立病院、全国最優秀のレシピ公開

 食べ物をのみ込むことが難しい人向けの嚥下(えんげ)食の大会(日本医療福祉セントラルキッチン協会など主催)で、山口市の阿知須共立病院の雑煮が最優秀に輝いた。喉に詰まりやすい餅の粘り気を抑え、5年前から正月に提供してきた。「多くの人に試してほしい」とレシピを公開している。

 昆布だしの雑煮は、粘り気を抑えた餅、ふわりと仕上げたかまぼこ、柔らかく加工したカブとニンジン、鶏肉が入る。主に献立作りを担う栄養科の片山さつきさん(38)、河野妙子さん(57)、久冨好美さん(30)が開発した。

 きっかけは医師から、正月の雑煮をやめてほしいと言われたことだ。もともと「食事で季節を感じてほしい」と雑煮を出していた。「楽しみにしている人をがっかりさせられない」と河野さんは思案した。

 餅の味わいを残しながら粘り気を抑える方法を考え、水分の多い豆腐を、白玉、上新粉に混ぜ込む製法にたどり着いた。カブ、ニンジンはミキサーにかけてから寒天で固め喉越しを良くした。高温でも溶けづらい寒天を使い、野菜らしい形にもこだわった。

 大会には全国の病院や福祉施設から107品の応募があった。書類審査を通過した6団体が9月、東京都で調理や質疑の決勝に挑んだ。同病院の雑煮は審査員から「餅の喉越しが素晴らしく野菜の形も良い」と高い評価を受けた。

 片山さんは「お年寄りだけでなく子どもにも使える。家庭や施設で役立ててほしい」と話す。レシピを公開している同病院のウェブサイトhttp://www.kyoai.or.jp/deli/(

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