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お口の乾き大丈夫? 歯と口の健康アラカルト

最近お口が乾いて仕方がない、食事の際に痛みがあり飲み込みづらい、入れ歯ががたついてよく落ちるなどの症状をお感じになった事はありませんか?

 それは最近話題になっている口腔(こうくう)乾燥症が原因かも知れません。現在、口腔乾燥症の潜在患者数は推定800万人ともいわれています。原因としては加齢による唾液腺の機能低下、特定薬剤による副作用、放射線治療の後遺症などが考えられ、唾液分泌量の目安は安静時は15分当たり1・5ミリリットル以下、刺激時は10分当たり10ミリリットル以下とされています。

 ただ、前述のような症状を感じてもさほど重篤な症状ではないため、患者の方自身があきらめ、放置される傾向があります。

 歯科としても、これまではあめ、ガムなどを用いて唾液腺に刺激をあたえることや、うがいの励行、こまめに水分摂取、保湿剤の使用などを指導するぐらいでした。しかし、最近の研究から口腔乾燥症により虫歯が進行し、また歯周症(歯槽膿漏(しそうのうろう))の重症化を引き起こし、内蔵や循環器の疾患の遠因ともいわれるようになっているため、歯科からの取り組みとして従来からの対症療法だけでなく、装置をお口の中に用いて積極的に水分補給する事ができないかと考えられています。

 具体的には、マウスピースに給水袋を取り付けたものや、入れ歯やかぶせに空洞部分を作り貯水槽として水分を注入し、お口の中を常時湿潤状態に保とうとするものです。ただ現段階では装置自体が大きいため、違和感が非常に強かったり、給水量が十分でなかったりと、お口の乾燥状態を解消するには至らないといった問題点や改善箇所が多いので、これからの研究課題となっています。

のみ込むリハビリ支援地図 「医療新世紀

食べてのみ込む機能の検査やリハビリが受けられる全国約千カ所の医療機関を日本地図上に示した「摂食嚥下関連医療資源マップ」がインターネットで公開された。戸原玄・東京医科歯科大准教授を中心とする厚生労働省研究班が作成した。

 のみ込む機能が衰えると、食べ物などが誤って気管から肺に入って起きる「誤嚥性肺炎」の原因となり、特に高齢者では命取りになるため、こうしたリハビリは重要。

 マップは内視鏡検査やリハビリ、訪問診療などを行う医療機関名を表示。住所で検索もできる。サイトへの掲載を希望する医療機関も受け付け中。問い合わせはメールでswallowing.link@gmail.comへ。

医歯工学研究で4大学連携へ 静大など2016年度から

静岡大電子工学研究所(浜松市中区)は来年度から、東京医科歯科大、東京工業大、広島大の各研究所と連携し、歯科を含む医療分野での技術開発、人材育成に向けたネットワーク構築に乗り出す。1月中にも文部科学省の「生体医歯工学共同研究拠点」として認可される見通しで、医療機器の素材開発から医療現場での臨床応用までを共同で進める。

 複数の大学が施設や研究成果を共有する文科省のネットワーク型拠点は本年度、海洋生物学や物質・デバイス科学など3分野が認可されている。しかし、工学と医療を組み合わせた連携拠点はなく、高齢化社会が進む中で予防医学への応用、患者の負担が少ない低侵襲治療につながる技術開発が期待される。健康と密接な関係が指摘される歯科も含め、幅広い研究を進める。

餅詰まらせ2人死亡 東京、18人搬送

東京都内で1日から3日にかけ、餅を喉に詰まらせて58~94歳の男女18人が病院に運ばれ、このうち杉並区の女性(83)と練馬区の男性(93)が死亡したことが3日、東京消防庁のまとめで分かった。

 東京消防庁によると、女性は1日、自宅で雑煮の餅を、男性は3日、自宅で餅を喉に詰まらせた。同庁は「小さく切って食べ、ゆっくりとかんでのみ込んでほしい。お年寄りや子どもと食事をする際は様子を見て」と注意を呼び掛けている。

医療従事者が実践する食事・健康法は?

医師の3割が実施、糖質制限ダイエット

 当直や急な呼び出しなど不規則な生活を送る人も多い医療従事者。日々の食事や健康法について尋ねたところ、毎日朝食を食べ、30分以上の運動を行い、健康的な生活を心がける人も多いことが分かりました。

 朝食は、全職種で「毎日食べる人」が過半数以上。「ほとんど毎日食べる」を合わせると、8割以上が当てはまりました。その中で、朝食を「食べない」と答えた人が比較的多かったのは医師や看護師。勤務医と看護師は「毎日食べる」と答えた人が8割を切るなど、規則正しい食生活が送れない人も多いようです。

 「毎日、30分以上の運動をする」と4割以上が回答したのは歯科医師。回答者総数が5人と少ないものの、全職種でトップでした。その次に多かったのは開業医13%、勤務医10%、看護師10%の順でした。開業医も勤務医も「週1回以上する」と答えた人が過半数以上を占め、多忙な中でも積極的に運動しているようです。「毎日する」の回答者が一番少なかったのは薬剤師でした。

 食事中の炭水化物や糖分を控える「糖質制限ダイエット」。糖尿病患者の治療で導入され、ハリウッドセレブや日本のタレントにも最近人気ですが、医療従事者も実施している人が多いようです。「自身が実施」「自身・周囲が実施」を合わせると、最も多かったのが開業医で36%。勤務医でも28%で、3割近くの医師が自ら糖質制限ダイエットを実施していると答えました。次に多かったのは「その他の医療従事者」で23%。一番少なかったのは看護師で16%でした。

1年の締めくくり

 今年も31日と最後を迎えます。皆様には、ご尽力頂きありがとうございます。来年もスタッフ一同頑張りたいと思います。

将来、天気次第で歯周病も予報? 岡山大大学院の森田教授ら研究

「きょうは気温の上昇が急激でしたので、あすは歯茎の炎症などの症状が出やすいでしょう」―。将来、こんな予報が出されるかもしれない。天候が歯や口の健康に影響している可能性があることが、岡山大大学院の森田学教授と竹内倫子助教=ともに予防歯科=らのグループの研究で分かった。気圧、気温の変化が歯茎の痛みや腫れといった歯周病の急性症状に関与していることが予想されるという。

 天候の変化による病気の発症は「気象病」「季節病」と呼ばれ、脳梗塞、頭痛、うつ病、神経痛などが知られている。

 グループは2011年11月~13年11月、岡山大病院予防歯科を受診した患者延べ2万34人のうち、原因の分からない急性症状が出た県南の男女153人(平均年齢68・7歳)を対象に調査。岡山地方気象台のデータを活用し、発症時の気象条件を分析した。

 その結果、1時間ごとの気圧が急激に低下した日の2日後と、1時間ごとの気温の上昇が大きかった日の翌日に発症するケースが多かった。過去の研究報告なども加味すると、気圧や気温の変化が交感神経に影響したり、気圧の低下が歯周病の原因細菌の増殖に関与したりしている公算が大きいとみられる。

 竹内助教は「さらに研究を重ね、天気予報のように“歯周病注意報”が出せる仕組みを作りたい」と話している。

歯周病抑制の分子発見 治療に道 新潟大大学院、前川助教らのグループ

体内で分泌される「Del(デル)―1」という分子が、歯周病の治療に有効であることを新潟大大学院医歯学総合研究科高度口腔(こうくう)機能教育研究センターの前川知樹助教(34)=免疫学=らの国際研究グループが発見した。歯周病などの炎症反応を抑える上、歯の骨を溶かしてしまう細胞の働きを弱めることが分かった。この分子を体内で効率よく作る方法も導き出した。前川助教は「副作用の心配を考えると、体内で作られるDel―1で炎症と骨破壊を抑えられるのは安全性の面で意義が大きい」と話している。

 歯周病は、慢性炎症の代表的疾患。歯肉炎症を起こし、歯槽骨が壊れる。歯を失う最大の原因だが、完治させる有効な治療法は確立されていない。Del―1は血中や脳内などに存在。乳幼児には多くあるが、年齢が高くなるにつれ減少する。

 前川助教らは4年前に研究を開始。Del―1が、破骨細胞が活性化しないように作用することを突き止めた。サルを使った実験では、歯周病の炎症を抑え、破骨細胞の数を減らすことができた。

 また、老化予防などに有効とされるオメガ3脂肪酸などからできる「レゾルビン」という化合物を投与すると、体内でDel―1が多く作られることが分かった。このようにDel―1の生成を誘導すると、歯周病だけでなく、多発性硬化症、強直性脊椎炎などの慢性炎症性疾患の治療にも有効である可能性も実験で示された。

 研究成果は英学術誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」、米学術誌「サイエンス・トランスレーショナル・メディシン」で発表した。

 広島大大学院医歯薬保健学研究院の藤田剛准教授(歯周病態学)は「Del―1が歯周組織の炎症の制御と骨破壊の抑制という両面に、効果的に作用していることを解明した点が画期的だ」と評価。「歯周病はさまざまな疾患とも関連していることから、Del―1の誘導、制御を応用した歯周治療の開発は健康寿命の延伸に大きく貢献すると考えられる」と期待した。

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