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で半固形に変わる栄養製剤

カネカは、ライフサイエンス分野の事業領域を拡大するため、流動食に進出する。摂取時には液体状だが、胃の中で半固形状になる粘度が変えられるタイプの流動食を開発し、利用しやすいように仕上げた。要介護者の増加にともない拡大基調にある流動食市場で、とくに経鼻経管向けで優位なポジションが得られると判断し、製品化を決めた。同社では今春、提携したテルモに販売を委託し、今月末から市場供給を行う。カネカでは、2016年に同流動食で売上高6億円を目指す。

 開発した流動食は、増粘剤用途で広く食品に使われているアルギン酸塩の酸性下でゲル化する特徴を応用。特殊技術を施すことにより、胃に入るとpHが低下し粘度が上昇して液状から半固形状になるよう設計している。

 流動食には、液状タイプと半固形タイプがあり、一長一短ある。液状タイプの場合、摂取しやすいが、食道を逆流して気管に入り、誤嚥下性肺炎や下痢を引き起こす可能性がある。一方、半固形タイプは誤嚥下性肺炎などの発症リスクは低減できるが、胃ろうからの流動食摂取と比べ管の細い経鼻経管による摂取は難しい。このため医療機関では、患者の容態に応じて使い分けしているのが現状。

 今回の流動食分野への市場進出は、経鼻経管からの摂取でも患者が負担なく栄養を摂取でき、胃の中で半固形に変わることで、医療機関のニーズに応えられるとし製品化を決めた。同社では今年4月に、開発から製品供給をカネカ、販売をテルモが担うという契約を結んでいる。テルモは、国内の半固形流動食で高いシェアを持ち、カネカによる製品を戦列に加えることになる。

 流動食市場は640億円規模(10年度分析)と推定され年率10%前後で成長しており、競争力ある製品として育成していく。

あご手術、CGでわかりやすく、島根大が最新ソフト

島根大医学部付属病院(出雲市塩冶町、井川幹夫院長)が、あごや顔面の骨をコンピューターグラフィックス(CG)で3次元データ化し、手術前にシミュレーションできる最新鋭の医療ソフトを今年度から導入した。「手術の様子がイメージしやすく分かりやすい」と患者の評判も上々という。

 同病院歯科口腔外科学講座の管野貴浩講師(38)によると、導入したのはベルギーに本社がある企業が開発したソフト。CT(コンピューター断層撮影)装置で撮影した顔からあごのデータを画像処理し、患者の顔の形や骨の形状をほぼ正確に立体で再現。手術で切開する部分などを事前に確認できる。東京や大阪、福岡など全国数カ所の医療機関しか導入していないという。

 島根大病院が連携する松江、隠岐の島、浜田、益田にある各医療機関の患者にも利用範囲を拡大している。十数年前、がんであごの骨の右半分を切除した患者の場合では、残された左半分の骨のデータを参考にして右半分の骨をCGで再現し、骨を再生する手術に応用した。手術時間の短縮効果もあったという。

 ソフトを利用することで、0・1ミリ単位でメスを入れる位置を変えたり、手術による顔の表情の変化をチェックしたりできる。管野さんは「歯のかみ合わせやあごの動きは繊細。少しのずれでも生活の質に大きく影響する。食べる、話すなどの機能を戻すことが重要」と話している。

食生活改善で認知症予防、久山町での疫学調査解析

認知症の予防に有効な食事パターンがある――。九州大が福岡県久山町で進める疫学調査「久山町研究」の解析から明らかになってきた。解析した九大久山町研究室学術研究員の小沢未央さん(30)は「運動や食生活を改善することが認知症の予防に重要」と指摘する。

 久山町は福岡市の東に隣接し、人口8339人(1日現在)の町だ。住民の年齢、職業構成は半世紀前から全国平均とほとんど変わらない。このため日本人の標準的なデータが得られるとして九大は同町に研究室を設置し、1961年から生活習慣病の疫学調査を積み重ねてきた。疫学調査とは、地域や特定の集団を対象に、病気の発生と要因の関連性を、統計的に明らかにすることだ。

 ●米控えめで発症抑制

 認知症に関する調査を始めたのは85年。同研究室が60歳以上の高齢者1193人を対象に17年間収集したデータを解析したところ、高齢者が生涯に認知症になる確率は約55%に上った。

 認知症の症状が出ていない60~80歳の計1006人の食事内容を17年間、追跡調査。そのうち計271人が認知症になり(うちアルツハイマー病144人、脳血管性認知症88人)、小沢さんは米、パン、麺、芋類、大豆、みそなどの摂取量と認知症の発症の関連を調べた。

 その結果、野菜▽牛乳・乳製品▽大豆・大豆製品――などの摂取量が多く、米を控えめにする食事パターンが認知症の発症を抑えていることが判明した。さらに、これらの食品摂取量との関係から認知症予防の影響度を数値化した=表。

 米は「減らすとよい」との結果になったが、米だけで調べると認知症の発症と関連はなかった。小沢さんは「一定の摂取カロリーの中で、米の摂取量が多くなると、野菜などおかずの量が減り、発症の危険度が上がるのではないか」と分析する。

 ●乳製品の効果確認

 また、「増やすとよい」となった牛乳・乳製品の成分と摂取量を検証したところ、牛乳・乳製品に含まれるカルシウムやマグネシウムに予防効果があることが分かった。またアルツハイマー病の原因物質の一つと考えられている酸化代謝物「ホモシステイン酸」を下げる作用のあるビタミンB12が豊富に含まれ、アルツハイマー病を含む認知症の発症率が下がったという。

人間ドック新基準の波紋、「健康」と「病気」の境目は?

日本人間ドック学会などが4月に発表した健康診断の新しい「基準範囲」の衝撃は大きかった。すぐに健診に適用されるわけではないが、従来より「健康」の範囲が広がり、喜ぶ人もいれば「今まで薬を飲み続けたのは何だったの?」と戸惑う向きも。何が起き、どう受けとめればいいのか。新旧の基準作りに関わった医師らや、こうした問題に詳しい識者に聞いた。3回に分けて紹介する。【高木昭午】

 ◇高血圧やコレステロール 現行基準は「厳し過ぎ」

 学会と健康保険組合連合会が共同で示したのは、健診の検査27項目の新基準範囲。特に注目されたのが血圧とコレステロールだ。何しろ高血圧、高コレステロールの患者は全国で推定7000万人以上おり、関連医療費は3兆円を超す。

 現在の高血圧の診断基準は「最高血圧140以上か最低血圧90以上」だが、新範囲では最高147、最低94までは「健康」になる。LDL(悪玉)コレステロールも今の診断基準は「140以上」が脂質異常症だが、新範囲では男性は178まで、女性は45~64歳なら183まで、65歳以上は190までが「健康」だ。

 病気と健康の境目はそんなに簡単に変わるのか。まず学会学術委員長の山門実・三井記念病院総合健診センター特任顧問に尋ねた。「年を取ればコレステロールも血圧も自然に上がるのに、今の基準は考慮していない。加齢や男女差を反映した基準が必要だ」

 山門さんは新範囲を作った理由をこう説明した。未公表だったが、血圧の男女・年齢別の数値=表=もある。高齢者になるほど範囲は広がり、70代後半なら最高血圧160も範囲内だ。医師間に以前からあった、高齢者の血圧を「年齢+90」まで正常と見る考えに近い。

 新範囲はこう求めた。2011年度に全国200施設の人間ドックを受診した約150万人から、検査項目ごとに▽がんなどの病歴がない▽喫煙なし▽他の検査項目で異常なし――などを満たす「超健康人」を1万~1万5000人選び、性・年代で分ける。極端な値の排除のため上位2・5%と下位2・5%の検査値を捨て、残った値を基準範囲と定める。つまり同性、同年代で元気な人の「人並みの範囲」ということだ。

 「基準範囲で検査結果が年齢相応か、などが分かる。健診を繰り返し、結果が範囲を外れかけたら手を打つ“先制医療”をやりたい」と山門さん。

 ただし血圧やコレステロールの基準値は従来「値が高いと将来、脳卒中や梗塞(こうそく)になる確率が高まる」との考え方で作られてきた。今回のように「今、健康な人」を調べても将来の発症率は分からない。現行基準を作った日本高血圧学会と日本動脈硬化学会はこの点を強く批判する。

 山門さんも批判を認め「新範囲を使えるのは5、6年後。範囲におさまる人たちを追跡調査し発症の少なさを確認した後だ」と話す。それでも「今回は問題提起だ。現行基準は厳し過ぎて現場に合わない。例えばコレステロールだと元気な高齢女性の半数弱がひっかかる。人間ドックを受けても(元気なうちの治療代がかさみ)生涯医療費が減らない可能性がある。基準を再考すべきだ」と訴えている。

脳機能 かむことで回復

軟らかいものを食べ続けると脳の機能が低下するが硬いものを食べればその機能は除々に回復することを、旭川医科大などの研究班がマウスの嗅覚の実験で実証した。動物の実験ではあるが、かむことと脳の機能との関係を示す一つの成果として注目される。研究班は脳の働きの中の一つ、嗅覚に注目した。嗅覚は、マウスもヒトも、脳内の「脳室下層」で作られる神経細胞が、脳内でにおいを最初に感知する「嗅球」に移動して働く。研究班は、よくかむ必要がある固形飼料だけを与え続けた「固形マウス」と、かむ必要がない粉末飼料だけを与え続けた「粉末マウス」の脳の内部や行動を比較した。
 研究班の一員で、旭医大の柏柳誠教授(感覚生理学)は、「咀嚼が嗅覚に影響することが明らかになった」と松田光悦教授(歯科口腔外科学)は「自分の歯でかむことが、脳機能を含めた健康に重要なことを示す結果だ」とそれぞれ歯ナス。
                    北海道新聞 2014.5.31

気づきにくい口腔がん

中高年以降に発症が増える口腔がんは、早期に治療すればほぼ治る。しかし口内炎と勘違いするなど、早期には気づかないことが多い。がんの中では、がん組織を肉眼で見ることができる唯一の種類でもあり、兆候や点検方法を知っておけば早期発見につながる。
 口腔がんは、進行すると口の中が腫れたりし、食べ物をかむ、飲み込む、呼吸する、会話するといったことが困難になる。顔も腫れ、形も崩れていく。早期に発見されにくいのは、ゆっくり腫れたりするので違和感を感じにくいためだ。痛みもないため、自覚症状が少ない。発見は一般的にかなり進行してからが多い。その時点で全身のあちこちに転移していることもある。虫歯の治療で歯科が見つけたケースも少なくないという。
 厚生労働省によると、2012年度のがん全体の発生数36万人のうち口腔がん関連は約7200人で2%程度だが、ここ数年の発生数は伸びている。発症が60代以降に多く、高齢化が進んでいるためだ。男女比は2対1で男性が多い。口腔がんの原因としては、たばこやアルコールが特に危険因子。たばこやお酒の摂取量が多い状態が長年続くと、がんを誘発する確立が高くなる。また、入れ歯や詰め物など、歯やあごの形状と合わないものが入っていると、刺激となってがんの誘発要因となる。

口腔がんの疑いのある兆候

 □2週間以上治らない口内炎がある
 □なかなか治らない傷がある
 □しこりや腫れがある
 □指先でさわると痛みや硬い部分がある
 □歯のぐらつきが続いている
 □口の中から出血がみられる
 □ほおや舌が動かしづらい
 □赤くただれた部分や白くなっている部分がある

歯周病 唾液で判定 短時間で無料健診

県歯科医師会(和田明人会長)は7月から、唾液を採取するだけで歯周病のリスクが簡単に判定できる企業向け無料健診を始める。30歳以上の約8割がかかっているといわれる歯周病の早期発見と治療につなげてもらうのが狙い。従来の歯周病健診と比べて短時間でできるため、歯科医師会は「仕事の合間に気軽に受けてほしい」と呼び掛けている。

 歯周病は細菌の感染によって引き起こされる炎症で、歯ぐきが腫れたり、症状が進行すると歯を支える骨が溶けて歯が抜けたりする原因にもなる。県によると、子どもの虫歯や成人の歯周病の割合はいずれも全国平均を上回っているという。

 健診では、無糖ガムを噛(か)んでもらって唾液を採取し、唾液中の血液や組織破壊産物の量を測定する。血液や組織破壊産物は歯周病と相関関係があり、測定された数値で歯周病の進行具合が分かるという。

 また、口の中の状態や生活習慣などに関する問診も行い、歯の健康度合いについても判定する。健診は約10分で終わり、測定結果が約1週間後に郵送される仕組みだ。

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