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世界人口白書2023

UNFPA(国連人口基金)が今年4月に発表した「世界人口白書2023」によると
インドの人口が中国を抜いて世界一となる見通しです。今年半ば時点でインド
の人口が中国を290万人上回り、14億2860万人となる予測が立っています。この
背景には中国が1979年から30年以上に渡り実施した「一人っ子政策」により、
急速な少子化が進んだことが要因だと考えられています。白書によると2023年の
世界人口は80億4500万人となり、昨年に比べ7600万人の増加予測で、2023年の
日本の人口は、昨年に比べ230万人の減少で1億2330万人、世界第12位となって
います。
 世界の人口は約70億人と教科書で覚えた方も多いかと思いますが、いまや
世界の人口は増加の一途を辿っており、予測では2030年には85億人、2050年に
は97億人、2080年代には104億人とピークを迎え、2100年まで同水準で推移す
ると推定されています。さらに予測では、2050年までの世界人口増加の大半は
コンゴ民主共和国、エジプト、エチオピア、インド、ナイジェリア、パキスタン、
フィリピン、タンザニアの8カ国に集中し、一方、20%以上の人口減少に直面
するのがブルガリア、ラトビア、リトアニア、セルビア、ウクライナとされて
います。やっと少子化対策に本腰を入れ始めた日本においては、その着実な取
り組みに期待したいと思います。

睡眠中の歯ぎしりは食物繊維の摂取量と関連

岡山大学は5月24日、睡眠中に歯ぎしりをする大学生は食物繊維の摂取量が少ない傾向にあることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大学術研究院医歯薬学域の外山直樹助教、江國大輔准教授、森田学教授(当時)、ノートルダム清心女子大学食品栄養学科の長濱統彦教授、小見山百絵准教授、山下美保准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Clinical Medicine」にオンライン掲載されている。

 睡眠中の歯ぎしりへの一般的な対処法はマウスピースによる歯の保護などのように、歯ぎしりによる被害を緩和する対症療法である。しかし、歯ぎしり自体を減らす方法はまだ見つかっていない。研究グループは先行研究で睡眠中の歯ぎしりと睡眠の質との関連を明らかにした。睡眠中の歯ぎしりは睡眠段階N1(浅いノンレム睡眠)に起こりやすいことがわかってきている。つまり、睡眠中の歯ぎしりは睡眠の質が低いと起こりやすいことを示している。そこで今回、睡眠に影響を及ぼすものとして栄養に着目した。例えば、コーヒーに含まれるカフェインは覚醒作用があり、睡眠時間を短縮することが知られている。

アレルギー:親の唾液でアレルギー予防? 乳児期摂取、発症低下 研究チームが調査

 和歌山県立医科大などの研究チームは、1歳までの乳児期に親の唾液を口にした小中学生は、アトピー性皮膚炎とアレルギー性鼻炎の発症リスクが下がる傾向があると発表した。約3600組の親子を対象に、大規模な疫学調査をした。親の口の中にいる細菌が乳児の免疫を刺激し、アレルギー予防につながっている可能性があるという。

 チームは2016~17年、石川県と栃木県の小学1年~中学3年の子どもとその親計3570組を対象に調査。アンケートで乳児期の生活習慣などを質問し、94・7%が回答した。

 調査結果によると、小中学生のアトピー性皮膚炎の発症は、乳児期に親と食器の共有をしていると48%低下し、親が口の中に入れたおしゃぶりを使っていると65%低くなった。アレルギー性鼻炎の発症は、おしゃぶりの共用で67%低下したが、食器共用とは明らかな関連は見られなかった。

 13年にスウェーデンで同様の調査が行われ、乳児期に親の唾液を摂取すると3歳時点でのアレルギー発症リスクが低下するとの結果が発表されたが、小中学生にまで広げた研究は初めてという。

 チームの久保良美・和歌山県立医大博士研究員は「乳児期のどのタイミングで親の唾液に触れるのが一番効果的なのか、さらに研究が必要だ」と指摘した。

 一方、親の唾液が乳児期の子どもの口の中に入ると、虫歯の原因となるミュータンス菌に感染するという指摘がある。久保研究員は「ミュータンス菌は、歯が生えてから定着する。歯が生える前の唾液接触が重要だ」と話した。

歯科診療所運営の法人破産、負債1億

(医)社団〇会(厚〇市、設立199〇年9月、)は4月20日、地裁支部より破産開始決定を受けた。破産管財人には〇弁護士が選任された。

 負債総額は約1億1900万円。

 「歯科クリニック」を運営し、
歯科診療所として相応の患者を抱えていた。しかし、20〇年に院長であった氏が、病気を理由に診療できなくなった。このため、親族が実質的に事業を承継したものの、業績不振が続いていた。具体的な打開策などもなく、支えきれなくなり今回の措置となった。

静岡県民の歯科受診半数以下 静岡県と社会健康医学大学院大が分析

静岡県と静岡社会健康医学大学院大(静岡市葵区)は国民健康保険の特定健診や医療、介護の情報を保管する「国保データベース」を活用し、歯科口腔(こうくう)の健康課題に関する分析結果をまとめた。1年間に歯科を受診した県民は半数以下にとどまり、糖尿病患者の受診割合はそうでない人に比べて低いことが判明。年代別や地域別のデータを県や市町の施策に生かし、受診率の向上を促す。

 匿名化された静岡県内の被保険者約200万人のビッグデータから重複事例などを整理し、2015~19年度の5年分を解析した。

 19年度に1回以上歯科を受診した人の割合は46・0%で、15年度の42・3%から年々増加した。19年度の受診割合は男性43・6%、女性47・9%。年代別は20代が21・6%で最も低く、70代が54・3%で最も高かった。

 40歳以上の歯科受診割合を地域別にみると、藤枝市が52・8%で最も高く、浜松市、湖西市、清水町、長泉町も50%を超えた。伊豆は受診割合が低い市町が多く、最も低い松崎町は30・0%にとどまった。市町の比較については「人口10万人当たりの歯科医師数や所得情報なども考慮した解析が必要」と指摘した。

 糖尿病患者の受診割合は男性44・1%、女性45・9%で、糖尿病でない人より男性で1・7ポイント、女性で4・1ポイント低かった。そしゃく状態についても分析したところ、「ほとんどかめない」と回答した人は歯科受診割合が低いことも分かったという。

 分析結果は県の次期歯科保健計画に反映させるほか、市町とも共有する。歯と口の健康は全身の病気リスクに影響するとされ、報告書では「歯の数と寿命」「歯周病と循環器疾患」「口腔の健康と認知症」などをテーマにしたエビデンス(根拠)コラム集も掲載した。

 データ分析を取りまとめた同大学院大の佐藤洋子講師(医療統計学・歯科学)は「定期的な歯科受診によって歯と口の健康を保つことができる。年代別や地域別に受診割合を向上させるための対策を進めることで、健康寿命の延伸につなげたい」と話す。

子供用歯磨剤「チェック・アップコドモA」(以下本製品)の使用後にアナフィラキシー

本年5月19日の厚生労働省通知により、子供用歯磨剤「チェック・アップコドモA」(以下本製品)の使用後にアナフィラキシーを発現した事例が、2022年12月から2023年5月の間に3件報告されています。本製品の使用とアナフィラキシーの発現との因果関係は明らかにされていませんが、厚生労働省は,今後本製品の使用に関する安全性についてより注視する必要があるとしています。それを受けて、ライオン歯科材料株式会社より、本製品を患者様に推奨するにあたって、患者様のアレルギー様症状の既往や喘息の既往等を確認するように注意喚起されています。詳細は以下URLよりご確認の上、ご対処いただきますようよろしくお願いいたします。

厚生労働省通知
https://www.mhlw.go.jp/content/001098618.pdf

ライオン歯科材料株式会社より注意喚起文
https://acrobat.adobe.com/link/review?uri=urn:aaid:scds:US:d36bad9f-f4b5-3350-8cea-be05ce6c1536

なぜ人は「つい食べ過ぎてしまう」のか?

「おいしい」には“意味”がある
 ダイエット中に「つい」一口食べたら、止まらなくなってしまった。

 好きなお菓子をつまみながらテレビを見ていたら、「つい」大量に食べてしまっていた。

 こうした、おいしくて食べ過ぎてしたという経験は、だれでも身に覚えがあることではないだろうか。どうして「つい、つい、食べすぎてしまう」をやってしまうのだろうか。

 その謎を考える前に、そもそも「おいしい」と感じること、その正体について述べたい。

 おいしさとは、食べ物を食べたときの「快感」だ。私たちは食べないと生きていけない。そこで、食べることに快感がもたらされることで、食欲がわくようにできているのである。私たちは体に必要なものは本能的においしく感じる。それを識別する役割を担っているのが味覚である。

 味覚は「甘味」「塩味」「旨味」「酸味」「苦味」で構成されており、このうち、甘味、塩味、旨味は、おいしく感じる。

 甘味はエネルギー源の糖、塩味は生体調節などに必要なミネラル、旨味はたんぱく質のもとになるアミノ酸や核酸に由来し、人体に必要な栄養素の存在を知らせるシグナルになっている。

「本能的なおししさ」と「経験的なおいしさ」
 一方、腐ったものは酸っぱくなり、毒のあるものは苦いものが多いため、酸味は腐敗を、苦味は毒素の存在を知らせる味だ。

 そのため、生まれたばかりの赤ちゃんでも甘味や旨味を口に入れると気持ちよさそうな表情になり、苦味や酸味は嫌がる。

 やがて食経験を重ねると、味覚は発達し、苦味や酸味を受け入れるようになる。大人になって苦いコーヒーやビールがおいしくなるなど、食経験を重ねることで感じるのが経験的なおいしさだ。

 このようにおいしさは、本能的なおいしさと経験的なおいしさに大別される。経験的なおいしさは、人それぞれで基準が異なるが、本能的なおいしさは生まれながらに感じる共通なものである。

 さて、味覚だけをとっても、「おいしさ」は、複雑なことがわかるが、味覚以外にもさらに多くの要因がからんでくる。

香りは食欲を制する!
 食欲をそそる、おいしさをもたらす要因には、味以外にも、においなど食べ物に由来するものはもちろん、食べる人の体調や食べるときの環境、食文化の背景など、多くのものがある。おいしさの要因には実に多くのものがあり、実際はかなり複雑な感覚といえるだろう。

 そのなかでも、甘い香りの果物、香ばしい香りのトーストなど、香りは味や食感などとともにおいしさの重要な要素だ。ポテトチップスやスナック菓子につい手が伸びるのも、香りが大きく絡んでいるのだ。

技術の進化が目覚ましい、フレーバーのすごい力!
 そういった食品に重要な香りや風味を与えているのがフレーバー(食品香料)だ。フレーバーは、調理や加工で薄れた香りを補い、食材由来の好ましくない臭いをマスキングする役割を担う。さらに、食品に新たな風味を加えるために添加される場合も多い。

 近年は技術の進歩によって、より本物に近い自然な香りのするフレーバーや、味と一体となっておいしさを生み出すフレーバーなどが開発されている。フレーバーは、食品の香りを再現するようにつくられており、味わう人の想像力をかきたて、食品のおいしさを引き立てている。
 
 マクロバイオティックのクッキングスクールなどを行っている「日本CI協会」で講演した際に、果汁含量の異なる2種類の果実飲料の官能試験を行い、香りがおいしさに及ぼす影響を評価してもらった。

 官能試験とは、人の感覚を使って物の特性を評価することで、試料の違いを評価することもあれば、好ましさを調査するために行われることもある。品評会や新商品の開発、市場テストなどさまざまな用途で使われる試験だ。

 試料の果実飲料は、どこのスーパーやコンビニでも売られている、よく知られている2製品を用いた。白い紙コップに入れて並べられると製品の区別はつかない。果実味をどちらで強く感じるか、色や味、香りなどどちらが好ましいかを評価してもらった。


2つの飲料の果実味、色や味、香りの比較

 実際は、Aが果汁25%、Bが果汁40%であった。だが結果は、色や香りの好ましさについては大差がなく、果実味の感じ方にも差がなかった。果実味や味の好ましさを感じる人の数は、果汁の濃度が低い方にむしろ多かったことが興味深い。

 また、フレーバーの加えていない果実飲料を25%に薄めたものも試してもらうと、果実味はあまり感じられないという人がほとんどだった。

 香りは味覚を操っているといっても過言ではないほど、おいしさに大きな影響を及ぼしていることを実感することができた。

 しかし、いくら「味」や「香り」が良くても、永遠に食べ続けることはできない。では、この「食欲」とは、どのようなしくみでコントロールされているのだろうか?

食行動のカギを握るホルモン「レプチン」
 生命を維持するためには、エネルギー源になる栄養素を摂取しなければならず、そのための食行動をコントロールしているのが食欲である。

 脳のなかの間脳にある視床下部には、摂食中枢や満腹中枢があり、摂食を調節している。ここは自律神経系の中枢で、体温や睡眠など、生命維持に重要な機能を制御しているところだ。

 脳にはホルモンなどを介して体内の栄養状態が伝えられ、栄養素が不足していれば、脳の摂食中枢が作用し、空腹を感じる。一方、十分に栄養素が摂取できれば満腹感を感じ、食べるのをやめる。

 体重は摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスの調節の情報で、体重を一定に保つことで、エネルギーのバランスを維持することができる。もし、食欲によるコントロールがなかったら、まったくお腹がすかず、やせ細っていくか、食べても食べても満腹にならず、体重が増え続けることになる。

 肥満や糖尿病の病態を解明する研究には、食欲を抑制できず体重や体脂肪が増加した肥満マウスが使われている。そのマウスでは「レプチン」という食欲を抑制するホルモンがはたらかないようになっている。

 正常マウスに比べて明らかに巨大な肥満マウスの様子を見ると、普段当たり前に感じている満腹や空腹が、生体にとって重要な意味があることを認識させられる。また、肥満状態の人を調べると、摂食は必ずしも抑制されておらず、レプチンが効きにくくなるという現象が起きていることが知られる。

食べ過ぎを防ぐには「脳をだます」!?
 おいしさは口や舌で感じるのではなく、脳で感じている。味覚や嗅覚、視覚、触覚、聴覚の五感をフルに活用して、食べ物の情報を脳に伝えている。では、食べすぎを防ぐために効果的な方法はあるのか?

 前述の通り、脳はおいしさを覚えており、おいしさは食べるという行動を促す。おいしさは食欲を引き起こし、さらに食欲が食行動を支えているのである。

 また、もしも何かを食べた後に下痢や吐き気など不快な思いをすると、その食べ物が嫌いになり、食べなくなることもある。内臓の不快感と味覚の情報が脳の中で合わさって、先天的に好きな甘い味でも嫌いになったりする。

 このような後天的な味覚の学習には脳の扁桃体の機能が関わる。偏桃体は味覚をはじめ、嗅覚や視覚などあらゆる五感の情報が集まるところで、「快」「不快」「好き」「嫌い」などの価値を判断している。内臓の感覚情報も集まってくるので、偏桃体の中でそれらの情報が処理され、その味を嫌うように記憶づけられている。

 また、味は同じでも、色が違うだけで食べ物はおいしそうに見えたり、まずそうに見えたりする。一般的に赤やオレンジ色など暖色系の色はおいしそうに感じ、青や紫色など寒色系の色はあまり感じない。

 色は、食欲をコントロールする手段かもしれない。

 また、実験マウスのところで述べた、食欲を抑える「レプチン」のメカニズムと、それに関わる酵素などの研究が進んでいる。将来的には、そのメカニズムを利用して食欲をコントロールできるのではないだろうか。

   ◇   

 さて、おいしさと食欲の関係ついて概観してみました。さまざまな味や味覚にあふれ、彩り豊かな食べ物が揃うお正月。青く寒々しいおせちも、不快な思い出いっぱいのお正月もありえないから、おいしいものをがまんするのは難しそうです。「1年のエネルギー源になる栄養素を摂取」と考えて、お正月はおいしいものを食べますか!

2型糖尿病患者のNSAID、心不全による入院リスクと関連

1998-2021年のデンマークのデータベースを用いて2型糖尿病と診断された患者33万1189例を特定し、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)短期間の使用が心不全の新規発症と関連するという仮説を立てて検証した。診断の120日以内に心不全、リウマチ性疾患、およびNSAIDの使用がない患者を分析対象とした。

 その結果、NSAIDの短期使用が、心不全の入院リスク増加と関連した(オッズ比1.43、95%CI 1.27-1.63)。特に80歳以上の高齢者(同1.78、1.39-2.28)、HbA1c高値に対して糖尿病治療薬の使用なしまたは1種類のみの使用者(同1.68、1.00-2.88)、NSAID新規使用(同2.71、1.78-4.23)で入院リスクが高かった。

【原文を読む】
Holt A, et al. Heart Failure Following Anti-Inflammatory Medications in Patients With Type 2 Diabetes Mellitus. J Am Coll Cardiol. 2023; 81: 1459-1470.

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