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たんの吸引などの試行事業案を了承―厚労省検討会

厚生労働省の「介護職員等によるたんの吸引等の実施のための制度の在り方に関する検討会」(座長=大島伸一・独立行政法人国立長寿医療研究センター総長)は8月9日、4回目の会合を開き、前回会合で同省が提示した「たんの吸引等の試行事業案」を大筋で了承した。これに伴い、来年3月には全国約40か所の事業所で試行事業が実施される。
 「たんの吸引等の試行事業案」では、事業を実施する施設として、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、グループホーム、有料老人ホーム、障害者(児)支援施設など(医療施設は除く)や、訪問介護事業所で「できる限り行う」と提案。また、全国約40か所の事業所で約120人の介護職員を対象に事業を実施する方針も示された。ただ、いずれの施設も、介護職員数人に対し、3年以上の実務経験を持ち、指導者講習を受講した看護師を配置するなどの条件を満たす必要があるとしている。

 介護職員が手掛けられる医行為としては、「たんの吸引(口腔内と鼻腔内、気管カニューレ内部。口腔内については、咽頭の手前まで)」と「胃ろう・腸ろう・経鼻の経管栄養」としている。ただ、胃ろう・腸ろうの状態確認(1日1回)や、経鼻経管栄養のチューブ挿入状態の確認は看護職員が行うとした。

 介護職員に対しては、「たんの吸引と経管栄養の両方を行う場合は、50時間の講義と、それぞれ5回以上演習」などの基本研修と、看護師の指導を受けながら所定の実習を行う実地研修が施される。なお、試行事業に参加できるのは、研修を終えた介護職員のうち、所定の評価基準を満たした職員だけと定められている。

 この試行事業案に対し、ジャーナリストで国際医療福祉大大学院教授の黒岩祐治構成員は「50時間の講義は、(働いている介護職員にとって)非常なマイナス」とし、技術の有無を判定する基準を設け、その基準を満たした人材に医行為を認める制度の導入を提案した。しかし、他の多くの構成員からは「50時間の研修時間が多いか少ないか、この内容でやってみてから判断すればよい」(太田秀樹・医療法人アスムス理事長)などとする声が上がり、試行事業案は了承された。
■医行為をめぐる議論、結論持ち越し

 試行事業案の了承に先立ち、たんの吸引や経管栄養を医行為から除外すべきかをめぐる議論が再燃した。三上裕司構成員(日本医師会常任理事)は「医行為の範囲の明確化をやらなければ、実際の議論はできない」と改めて主張。これに対し、「口の中だけは医行為でないとか、奥は医行為だとか、現実に線は引けない」(太田構成員)との意見のほか、「医療というものがかかわらなくなる可能性のある、誰でもできる行為になるのは全然望ましくない」(内田千恵子・日本介護福祉士会副会長)とする意見も上がり、医行為の範囲についての結論は持ち越された。
( 2010年08月09日 22:04 キャリアブレイン )

訪問診療 高まるニーズ

通院できない患者の自宅や施設に、歯科医が赴く訪問診療の充実を求める声が上がっている。寝たきりや認知症の高齢者、障害者らのニーズがあるが、訪問診療を手掛ける歯科医は少ない。
 公的医療保険の適用には制限があり、コストもかさむからだ。訪問診療に取り組む歯科医は「歯科難民を減らすため制限撤廃が必要」と訴えている。
                    河北新報 2010.7.3

心と食を支えるお口のケア認知症について考える②

 認知症における食の問題としては①自分で食べない、②食べてもすぐに止めてしまう、③口を開けてくれない、④食事を口の中にため込んだまま飲み込まない、⑤他の方の食事を食べてしまう、⑥ティッシュなどを食べてしまう、など多数あげられますが、これによって低栄養状態が引き起こされかねません。
 このような認知症の方の健康を支えていくために重要な役割をなすのは、認知症を抱えている家族であり、周囲の人々となります。認知症に関しての口腔ケアのエビデンスは未だ確立していないと言われています。
                      北海道経済 8月号

心と食を支えるお口のケア認知症について考える

「口」は様々な役割と機能を持ちますが、健康を維持する栄養面だけではなく、楽しく、美味しく、安全な食事、さらには人と人のコミュニケーションに必要な会話や感情表現を演出する役割もあり、特に高齢者では、日常生活において保守すべき中心的な器官の内の一つとして認識されています。
 近年「口の健康」を守るケアの方法や器具は数多く考案され、要介護高齢者の「口の健康」を取り巻く環境は改善の方向に向かっています。しかし、認知症の方には残念ながらこれらの恩恵が、効果的に行き渡っていないのが現実であって、その原因に「認知症への理解の不足」があるようです。
 認知症の「口の健康」を支えるためには、認知症に特化した特別な手技や器具は基本的に必要ではなく、むしろ認知症の方々の個々の特徴を理解することが必要不可欠とされています。
 認知機能の障害のない方や軽度に認知機能の低下が見られる方は、従来どおりの歯磨きができますが、除々に口腔の清掃度合いに”むら”が生じてきます。中等度になると簡単な清掃はできるものの複雑な清掃が困難になり、一部介助が必要でも介助の受け入れは自尊心が障害となり困難を極めるときがあります。
 高度の認知症になると通常の清掃行為が困難になり、不快感を極力軽減するような配慮が必要となります。また、同時に食事に関しても食に対する意欲の低下、摂食・嚥下機能は保持されているが一口の量や、食べる速度が不良となり食べこぼしなども出現してきます。

のみ込みやすさ 調理から

東京都豊島区の特別養護老人ホームにはそしゃくや嚥下(飲み下し)に問題のある人が16人いる。管理栄養士や介護職、看護師らは、管から栄養をとる「胃ろう」にせず、なるべく口から食べてもらう方法を歯科医の助言を受けて検討。姿勢の取り方、料理の盛り付け、介助道具の選び方などに様々な工夫を凝らす。
 軟らかく調理した食事の合間に「かりかり」とスナック菓子をほおばるのは、95歳の女性だ。忘れがちなそしゃくを促しているのだ。誤って気管に食べ物が入る誤嚥を、口に食べ物を多く入れすぎることで起こしやすい人には、食べ物を小分けにしたり、小さいスプーンを使ったりもする。
「口から」の取り組みが介護施設でほろがる一方、在宅高齢者への支援がほとんどないのが実情だ。歯科医や歯科衛生士、管理栄養士、ケアマネージャーらが、口から食べるのが難しい在宅高齢者を早めに見つけ、対応する活動を展開している。「今は家族に【食】に対する意識やこだわりがないと、食べられなくなったらすぐ胃をうに、となってしまう。在宅のお年寄りを支える地域のネットワークを作りたい。」
                 読売新聞 2010.6.25

技術進化 のど越し軟らか

できるだけ口から食べてもらう際に役立つのが「介護食」。介護が必要な人に適した食事のことで、そしゃくや嚥下(飲み下し)の機能が衰えた人にも、おいしく食べてもらう工夫が凝らせれている。
 「日本介護食品協議会」(東京)が定める自主規格に適合する介護食は年々増え、現在約500品目。生産額(2008年)も約65億円と3年間で倍増している。
                 読売新聞 2010.6.27

食器に配慮 集中助ける

 じっと座ったまま食べようとしない、口に食べ物を運ぼうとすると顔をそむけてしまう・・・。認知症のお年寄りの食事に苦労している人は多い。そんななか、認知症高齢者の「食べる力」を引き出そうとする取り組みが医療や介護現場で広がっている。
 認知症高齢者の食べる能力を研究している北海道医療大看護福祉学部教授の山田律子さんによると、対象が何であるかを認識できない「失認」や、目的に向かった行為ができない「失行」などの症状は、食事の場面でも表れる。
 失認なら、一口食べさせることで食べ物であることを認識させたり、失行なら、利き手にはしやスプーンを持たせたりするとよい。食事の様子を注意深く観察し、その人に合った介助法を選ぶことで、食べる力を保持することが可能になる。ただし、本人が自分でできることもあるので、「介助し過ぎない」ことも大切だ。
                 読売新聞 2010.6.26

飲み下す力 訓練で回復

植物状態である遷延性意識障害の人にも口から食べてもらう試みをしているのは、歯科医で大阪大准教授の舘村卓(たかし)さんだ。在宅の80歳代の女性は脳内出血で遷延性意識障害になり、胃ろうにし、7年間、口から食べていなかった。家族が「口から食べさせたい」と希望し、舘村さんは唾液が飲めるが、舌が動くかなど口からのどにかけての機能を調べ、食べ物を飲み込む反射が残っていることを確認。口腔マッサージを家族に指導した。
 約1年後。ベットの背を50度前後に起こし、首を少し前に倒した姿勢で、食べ物を乗せたスプーンを舌に乗せ、軽く下に押してから引き抜くと、「もぐもぐ」と口を動かして飲み込んだ。状態のいい時はおかゆやつぶしたバナナなどを食べる。ただむやみに食べさせると、食物が気管に入って起こる誤嚥性肺炎や窒息の危険もあり、注意が必要だ。
                 読売新聞 2010.6.24

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