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命救う力、地域で身につけて 災害に備えて心肺蘇生法など普及を 医師や大学教授らが会発足 神戸

県内の医師や大学教授らが、災害時に命を救える社会づくりを目指す「救命救急・災害時救助防災対策を推進する会」を設立した。西記念ポートアイランドリハビリテーション病院(神戸市中央区)で開かれた発足式で、参加者は「大災害が起きる前に、それぞれの地域で瞬時に対応できる力を身につけよう」と思いを一つにした。

 20年以上にわたり心肺蘇生法(CPR)の普及を続けてきたボランティアグループ「兵庫県心肺蘇生法を広める会」が発展的に解消し、「推進する会」が発足した。気候変動によって風水害などのリスクが高まる中、CPRの普及に加えて災害時の救助防災対策を各地域で進めていくという。

 発足に合わせて開かれた講演会では、インドネシアのハサヌディン大名誉教授フスニ・タンラ医師(80)が、各国との学術交流や日本からの救急車寄贈など、インドネシアでの救命救急に関わる活動について説明した。

 インドネシアは近年、多くの地震、津波災害に見舞われる中で「助け合いの精神を日本から教えてもらった」とし、国民の防災意識が変化していることにも言及。「災害時に、現地のニーズを把握して素早くボランティアらを取りまとめてくれる調整役が必要だ」と提案した。

 「推進する会」の会長には、同病院の院長で、兵庫県立大大学院特任教授の小澤修一さん(77)が就任。救命救急医として阪神・淡路大震災を経験し、県災害医療センターの立ち上げにも構想段階から関わってきた小澤さんは「どんな災害が来ても支え合えるよう、官民が連携し、命を救える地域づくりを実現したい」と意気込みを語った。

後期高齢者の歯科受診は全身疾患による入院発生の予防効果あり!

 2022年12月13日にArchives of Gerontology and Geriatricsに掲載された研究によるもので-山田宏のデンタルマガジン・Evidence Check!-に報告された。

[研究のポイント]
☆北海道に在住する後期高齢者約80万人のうち、ベースライン期間(2016年9月から2017年2月)に医療機関を受診した約75万人を対象者とした。
☆ベースライン期間に入院経験があった者や在宅医療を利用していた者、要介護認定があった者などを除いた432,292名分のレセプトデータを分析に用いた。
☆歯科受診があった者と、歯科受診がなかった者の特性(性別や年齢、医療費自己負担割合、疾患、健康診断受診の有無、地域)を均等にするため、傾向スコアマッチング法を用いた
☆2年間の追跡期間(2017年3月から2019年3月)とした。
☆歯科受診がなかった者に比べて、歯科受診があった者では、肺炎と脳卒中発作、尿路感染症による入院の発生割合が低かった。
☆歯科受診がなかった場合に比べると歯科受診があった場合に、急性期の入院発生は、肺炎で15%、脳卒中発作で5%、尿路感染症で13%の抑制効果が認められた。
https://doi.org/10.1016/j.archger.2022.104876

新型コロナ・オミクロン株 爆発的感染の原因を解明か

オミクロン株に感染した人の唾液の中には、従来株の感染者に比べて、遠くへ長時間飛びやすい状態の新型コロナウイルスが多量に含まれていることを、日本大学などの研究チームが突き止めた。

 新型コロナウイルスのオミクロン株が爆発的に感染拡大する理由は、宿主細胞の内外に付随していない裸のウイルス(セルフリーウイルス)の唾液中の多さにある。日本大学歯学部感染症免疫学講座の今井健一 教授らは、とても小さく唾液に覆われた状態でも室内に長時間漂うセルフリーウイルスが、変異を起こす前の従来株やデルタ株と比べてオミクロン株患者の唾液中に多く排出されていることを世界で初めて発見。エアロゾル感染がこれまでの株以上に広がりやすいことから、改めて歯科診療所での換気の大切さを強調している。


【歯科通信】

日歯会長予備選挙 大久保元会長が高橋氏を支援

元 日本歯科医師会会長の大久保満男 氏が、日歯会長予備選挙に立候補している高橋英登 氏の支援を公言した。大久保氏はあいさつで、高橋氏について「私も国民皆歯科健診に何度か挑もうとしたが、あまりに厚く高い壁で歯も立たなかった。それを見事に大勢の人を引き連れ、先頭に立って、重い扉をこじ開けた。それだけでも先生の功績は大きい」と強調した。
さらに、厳しい状況の中で時代がどのような会長を求めているかが重要とし、「正当な政治力の行使が日歯の会長に求められている」と主張。世界情勢から防衛費が手厚くなっている状況に触れ「厳しい財源の中で医療費をもっと抑えようという動きが出てこない保証はない」と述べ、「防衛は国の安全保障だが、社会保障、医療は人間の安全保障。安全保障として防衛と国民の健康は一体なので、防衛費を増やすために医療費を減らすのは矛盾の極まり。それをしっかり申し上げる政治力が次の会長に求められている」と訴えた。

【歯科通信】

新食感、コーヒーにとろみ 嚥下障害向けコメダ商品化

 コメダ珈琲店を運営する「コメダ」(名古屋市)は、のみ込む力が弱い嚥下(えんげ)障害に悩む人にもコーヒーを楽しんでもらおうと、とろみがついたインスタントの「とろみコーヒー」の販売を始めた。ゆっくりのみ込めてむせにくいのが特長で、2年半かけてコク深い味わいを実現、「『新食感』を一般の人にも楽しんでほしい」としている。

 同社マーケティング本部の伊藤弥生(いとう・やよい)本部長によると、新型コロナウイルス感染が広がり高齢客が減った2020年春に家庭向け商品を考えていたところ、「とろみ粉末を混ぜたコーヒーは介護施設の利用者に『おいしくない』と避けられてしまう」と相談があり、開発を決めた。

 「コメダで出す以上はおいしいものを、と役員からハッパをかけられた」と伊藤さん。10種類の増粘剤と、コーヒー豆のブレンド5、6種類から、さまざまな組み合わせを試した。とろみを強めると味が薄くなるためバランスに腐心し、昨年11月に商品化した。

 監修した朝日大病院の谷口裕重(たにぐち・ひろしげ)准教授(摂食嚥下リハビリテーション学分野)によると、介護食は味が二の次になるものが少なくないといい「安全や機能性と同様に、誰がのんでもおいしいと思えることが重要。のむことがのどの機能回復につながる」と強調する。

 同社のオンラインショップで、15杯1900円で販売。谷口准教授は「重度の嚥下障害がある患者が、毎日のんでいるとうれしそうに話してくれた」という。伊藤さんによると、冷めにくくホイップクリームとの相性も抜群。「嗜好(しこう)品やおいしいものは生きる喜びにつながる。今後も味を磨きたい」と話している。

その傷跡、虐待じゃない? 子どもの目、耳、口内、脇...目立たないところに傷「疑って」 法医学の専門家解説

つじつま合わない説明気をつけて

【鹿児島大大学院・林敬人教授】

 法医学は遺体を解剖して死因を究明することが本来の目的だが、近年は虐待を受けた可能性がある子どもを生きた状態で見て、適切な保護につなげるという予防的な観点でも活動している。特に出水市で4歳女児の死亡事案があった2019年ごろから、児童相談所の依頼で診察することが増えた。

 虐待を疑う所見かどうかかは、厚生労働省が作成した「子ども虐待防止の手引き」にある「繰り返す事故」「つじつまの合わない事故」「新旧混在する身体的外傷」「説明のつかない低身長や栄養不良」を参考にしている。

 「つじつまの合わない事故」とは、「子どもが自分で転んでけがした」など加害者の説明が成り立たない場合。虐待と、事故による損傷部位は全く異なる。通常転んでも帽子のつばより上の頭部や目、耳、口内、脇、二の腕、太ももは打たない。虐待する側も「目立たないところに...」との心理が働くため、そうした部位に傷があれば虐待を疑っていく。

 身体的外傷のうち、特徴的なものを挙げる。たばこは直径6~8ミリメートルの丸い痕がつく。ドライヤーから熱風が出た状態で押し当てると波打ったような痕、爪でつかむと三日月のような痕が残る。特徴的な形をしている場合、道具を使っている可能性を疑ってほしい。

 虐待を受けた年数に従い、「胸腺」という免疫に関わる臓器が小さくなることが知られている。免疫能が下がると、通常なら大事に至らないような傷や炎症が死因につながることもある。

 虐待を早期に発見し死亡させないためには、関係機関が連携することが大事だ。

矯正治療トラブル集団提訴 153人、医療法人側に

マウスピースを使った歯の矯正治療をモニターとして宣伝すれば、治療費と同額の報酬を支払う契約を結んだのに、実際は支払われなくなったとして153人が26日、東京都の医療法人社団や代表理事、東京都の会社などに計約1億9700万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。

 原告側代理人の弁護士によると、医療法人社団は歯科医院を都内2カ所と京都、福岡の両市に展開し、1400人以上が勧誘された。治療を放棄され健康被害が出た人もいるとして、告訴も検討している。

 訴状によると2018年4月以降、医療法人社団側はモニターの勧誘を始めた。153人は治療費など計154万~187万円を一括で支払えば、毎月一定額をモニターの報酬として得られ、実質的な負担がないとする契約を結んだ。報酬の一部は支払われたが昨年3月以降は停止。ローン返済が残った人もいた。「確実に破綻することを認識していたのに勧誘を続けた」と主張している。

 弁護士は提訴後、都内で原告らと記者会見し、勧誘には交流サイト(SNS)が利用されたと説明。153人の7割は女性で「女性をターゲットにする詐欺的商法だ」と話した。30代女性は「かみ合わせが合っていなくて食べづらい。借金と健康被害だけが残った」と声を詰まらせながら語った。

 訴えられた東京都中央区の会社の代理人弁護士は「当社が関与、関知しているモニター契約については、責任を持って支払いをしていく」などとコメントした。

患者を介護する「家族介護者」にも医療・介護専門職のケアが必要と判明

筑波大学は1月23日、家族介護者に対するアンケート調査で、被介護者(患者)に関わる医療や介護のさまざまな専門職から、介護者自身が受けるケアの経験とセルフメディケーションの実態を評価し、その関連を分析した結果、約3分の1の家族介護者がセルフメディケーションを行っており、さまざまな専門職からのケアを受けた経験をより高く評価している家族介護者はセルフメディケーションを行わない傾向にあることが示唆されたと発表した。この研究は、同大医学医療系の舛本祥一講師らの研究グループによるもの。研究成果は、「Research in Social and Administrative Pharmacy」にオンライン掲載されている。

 高齢化による家族介護者の増加に伴い、家族介護者自身の健康状態が介護の継続に影響を与えることがわかっているが、これまでの報告では家族介護者は介護に追われる中で、自らの健康管理をおろそかにしがちとされている。多くの介護者は患者の介護に対してストレスや負担を経験しており、介護負担は身体的、精神的、心理社会的にも大きな影響を及ぼす。また、介護者自身も高齢化し、慢性の病気を抱えながら介護しているケースも増加している。

 一方、セルフメディケーションは、日常の健康問題を管理する上で、一つの有効な手段だが、医療従事者への相談を経ずに利用できることから、薬剤の誤った使用や乱用、予期しない有害な事象や薬剤同士の相互作用のリスクもある。しかし、セルフメディケーションに関するこれまでの研究は患者自身の健康問題に関する調査が多く、家族介護者についての実態はわかっていない。また、家族介護者のセルフメディケーション利用に対しては、患者に対してケアを提供している医療や介護の専門職の認識も不十分と考えられる。

 在宅で療養する慢性の病気を患う患者は、医師、看護師、リハビリテーション職、薬剤師やケアマネージャーなど複数の専門職から治療・ケア・支援などを受けており、家族介護者も患者の介護を通して、しばしばそれらの専門職とコミュニケーションを取っている。このことから研究グループは「家族介護者のセルフメディケーション利用は、さまざまな専門職から提供されるケアの経験と関連するのではないか」との仮説を立てた。医療や介護の専門職は患者の健康問題のみに目が行きがちだが、介護者自身の健康問題や、それに対するセルフメディケーションの実態を知ることは、介護者の支援を考える上で重要だと考えられる。そこで研究グループは今回、慢性の病気を介護する家族介護者に対して、介護者自身が医療や介護の専門職から受けたケアの経験、セルフメディケーションの実態と、その関連性などを評価した。

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