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後期高齢者の保険料、上限引き上げを検討

厚生労働省は10月28日、社会保障審議会医療保険部会(部会長:田辺国昭・国立社会保障・人口問題研究所所長)に、後期高齢者の保険料の賦課限度額や所得割の比率を引き上げる案を提示した。後期高齢者の保険料と現役世代の負担を比べると、現役世代の負担の増加が大きいことがその背景にある(資料は、厚労省のホームページ)。

 委員からは、現役世代の負担軽減のため仕組みを見直すことに賛同する意見が集まった。引き続き具体案の取りまとめに向け議論を続け、2023年の通常国会にも関連する法案の改正案を提出する。

 後期高齢者が増加する中、現役世代の負担は増加の一途をたどる。2008年度を100とすると、後期高齢者1人当たりの保険料は2022年度に121、現役世代1人当たりの支援金は168となる見込みだ。こうした状況について委員からは「いびつな構造になっていると言わざるを得ない。同程度になるようにするべきだ」といった意見が複数上がった。

 後期高齢者の保険料は、▽被保険者全員が負担する均等割と、▽所得に応じて負担する所得割から成る。

 制度見直しのポイントの一つが、後期高齢者の保険料の賦課限度額を現状の66万円から引き上げる案。厚労省は具体的な引き上げ額はこれから検討・提示するとした。もう一つの見直しが、現状1:1である均等割の総額と所得割の総額の比率について、所得割の比率を引き上げるというもの。こうした改革により、後期高齢者の保険料も負担能力に応じたものという色が強くなる。

国保の賦課限度額、上限引き上げを検討

 同日の部会で厚労省は、自営業やフリーランスの人が加入する国民健康保険の保険料の上限を、現状の102万円から2023年度に104万円に引き上げる案を提示した。医療費が増加する中、収入確保のため、上限を引き上げずに保険料の「率」を引き上げると、高所得層は負担が変わらない中、中間所得層の負担が重くなる。これを避けるため、賦課限度額も引き上げる方針。2022年度も限度額を3万円引き上げており、2年連続の引き上げとなる。

胃ろう高齢者、薬剤耐性菌の保菌率高まる 広島大など発表、対策急務

広島大などの研究チームは25日、栄養をチューブで胃に送る胃ろうをしている介護施設の高齢者は「薬剤耐性菌」を保菌しやすい、との調査結果を発表した。胃ろうの有無で保菌率は便で2倍、口内で5倍の差が出た。抗生物質(抗菌薬)が効かない薬剤耐性菌が増えると感染症治療が難しくなるため、介護施設での対策が急務と提起している。

誤嚥性肺炎患者、入院24時間以内の食事再開...退院まで日数短縮

福島医大大学院医学研究科臨床疫学分野大学院研究生の片山皓太氏(35)は24日、65歳以上の誤嚥(ごえん)性肺炎の入院患者に対し、入院後24時間以内に口での食事を開始したところ、入院日数が短縮したとの研究結果を発表した。

 誤嚥性肺炎は食べ物を誤ってのみ込むことで発症し、高齢者の肺炎の約7割を占める。入院後は数日間、誤嚥を恐れて絶食状態になることが多い中、片山氏は患者の状態を考慮し、早く食事を取ることが早期退院につながることを示した。

 片山氏は、勤務経験がある白河厚生総合病院に入院した65歳以上の患者398人について、24時間以内に口での食事を始めた後の状況を調べた。その結果、食事再開までの時間(中央値)は29.8時間で、日本全体の医療データから判明した4日より短かった。また約3割の患者が24時間以内に食事を再開できた。

 急性期医療を担う白河厚生総合病院では9割の患者が口での食事が可能な状態で退院している。入院後24時間以内の食事開始によって入院日数は短縮したが、口での食事が可能なまま退院した患者の割合に変化はなかった。食事は患者ののみ込む力の状況によって固形物やピューレ状などさまざまだった。

 片山氏は、医師やリハビリなど多職種による患者への介入に力を入れている白河厚生総合病院の高田俊彦医師や宮下淳医師らと共同で研究した。

障害者施設にロボ導入強化 厚労省、職員の負担減狙い

 障害者の入所施設などで入浴や排せつを助ける介護ロボットの導入費用に関し、厚生労働省が補助を強化することが21日、分かった。腰痛になることもある職員の負担を軽減するほか、業務効率化で人手不足に対応する狙い。2023年度当初予算に向け2億7千万円を概算要求。21年度の補正予算に同様の費用を計上したが、22年度当初予算で見送っていた。

 介護ロボットは、職員が装着して力仕事を援助するもののほか、入浴時に利用者を持ち上げたり、ベッドからはみだすと感知して知らせたりするタイプがある。

 厚労省によると、高齢者施設でロボット導入を先行させた結果、負担軽減への効果を確認。実際に介護ロボットを導入した障害者施設では、利用者の入浴時の満足度が向上し、職員の腰痛が2割以上改善した例もある。

 障害者施設は1カ所当たり210万円まで、同グループホームは150万円まで補助する。補助枠内なら複数台購入できる。ロボットの種類によって1台当たりの補助額が決まっており、例えば入浴支援ロボットは最大100万円まで支援する。

 障害福祉事業所向けにロボットの体験会を開いた都道府県などに対しては、国が費用を全額補助する。

15都道県が医療機関に直接支給へ、物価高対策

物価高騰に苦しむ医療機関への支援が各都道府県で進んでいる。m3.com編集部が47全ての都道府県に取材したところ、既に15都道県が医療機関への直接支給を決めたことが分かった。ほかの4県は省エネ設備投資への補助というかたちで支援する。ただ、支給額や無床のクリニックを対象とするか否かなど、自治体によって支援に差があり、戸惑いの声も上がっている。残る28府県は検討中・未定としている。

 政府は9月、総額6000億円の「電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金」を創設し、医療機関などへの支援を推奨事業に挙げている。具体的な支援対象や金額は都道府県が決める。m3.com編集部は10月11~20日に全ての都道府県に取材し、同交付金などを活用した支援策をまとめた。

 病院・有床診療所に対しては、15都道県が9月補正予算などで直接支給を決定した。東京都は1床当たり最大5万1000円を支給する(『都が1床最大5万1000円を支給へ、光熱費・食材費支援』を参照)。病床数の少ない病院が多い地方では、一律で70万~80万円を支給した上で、病床に応じて加算するケースもあった。和歌山県は病床の区分によって、単価が異なり、急性期は1床3万7000円、慢性期は2万5000円とした。

 差が出たのは無床の診療所への対応だ。病院・有床診への支給を決めた15都道県のうち、13道県は無床診にも支給を決めた。ただ、金額は2万5000円から27万円まで大きく差が出た。

小児の肥満対策には2歳までの正しい食習慣の確立が重要

はじめに
 学校健診で肥満を指摘され、医療機関を受診される子どもへの対応が分からないとおっしゃる先生もいるのではないでしょうか。子どもはクリニックや病院を受診しても、「病識がない」もしくは困っていないので、血圧測定、血液検査、腹部超音波検査で、脂質異常症、脂肪肝や糖尿病など、さらなる異常を検出できたとしても、子ども自身は積極的に肥満に向けた取り組みはしません。それよりも2歳までの食育、家族と地域を巻き込んだ合理的配慮の方が大事だと思います。この論文では、子どもの肥満への戦略が検討されていたため、着目しました。

論文の概要
 この論文では、2歳までの食習慣は8歳になっても変わらないことが示されているため、小児の肥満を予防するための統合的な戦略として、2歳になるまでに健康的な食習慣を身につけさせることが大事であるとされています。また、小児の肥満予防は出生前から始まっており、母親の体重増加は新生児の肥満に影響を及ぼすことが分かっていることから、子どもの肥満予防には妊娠中の体重コントロールが必要であるとされています。

 さらに、①食事回数は肥満予防における重要な決定要因であり、1日2食以下よりも5食など補完が大事であること、②母乳栄養が効果的だが、人工栄養の場合には低タンパク質ミルクを選ぶこと、③2-17歳においては、60分程度の中等度から強度の運動負荷が大事であること、④家庭のみならず学校でもファストフードのようなものを食べさせず、学校に自販機を置かないといった協力が必要であること――などが重要な点として述べられています。

私の視点
 小児の肥満は、1975年から2016年にかけて世界で10倍に増えています。この傾向がこのまま続けば、2050年には16歳未満の子どもの25%以上が肥満になると推定されています。

 子どもの肥満は将来、糖尿病や心血管疾患のリスクとなることが明らかになっていますが、いまだに効果的な戦略は分かっていません。その背景には、子どもは肥満やその合併症の怖さが理解できていないことが挙げられます。夜中まで起きていて、身体も動かさずにゲームやSNSに没頭する生活は、肥満のみならず、子どもの心と身体にとって不健康そのものだと言えます。この論文でも述べられていますが、最近話題となっている「食育」に関して、食事の回数や内容、家族で食卓を囲むことの意義について、親に対してのみならず学校や地域における啓発が大事だと思われます。

4回感染した事例も...沖縄のコロナ再感染1.7万件 医師「一度感染したから大丈夫だと考えないで」

今年1月1日から9月25日までの沖縄県内新型コロナウイルス感染44万7848件のうち、2回目の感染が1万6679件、3回目が279件、4回目が4件だったことが、13日までに分かった。高山義浩医師(県立中部病院)が政府の新型コロナ感染症対策アドバイザリーボードに報告した。再感染は活動的な若者世代で多く、再感染までの期間は半年前後が多くを占める。懸念される冬季の再流行に備え、ワクチン接種や感染対策の継続を呼びかけている。

 2回目の感染は20代が3674件と最も多く、30代が3061件、10歳未満が2823件、10代が2534件となっている。3回目の感染も20代が最多の74件で、30代が66件、10歳未満が37件、10代が26件などと続いた。70代以上の再感染事例は、高齢者施設で集団感染が繰り返された影響も考えられるという。

 感染回数別の入院患者数は1回目が1万449人、2回目が279人、3回目が11人となっている。死亡者数は1回目が339人、2回目が11人、3回目が1人だった。2回目の感染事例1万6679件のうち、再感染までの期間は約半年後の28週がピークとなっている。

 県内の新型コロナは、今年8月に6千人を超えるなど過去最大の流行となった。現在は連日数百人規模と一定程度収束しているが、冬場は全国的にインフルエンザとの同時流行が懸念されている。

 高山医師は「一度感染したから大丈夫だと考えないでほしい。一定期間経過すると免疫が低下して、ふたたび重症化する可能性がある。高齢者や基礎疾患のある方はワクチン接種を重ねることで、免疫を維持するようにしてほしい」と呼びかけた。

マイナ保険証「導入・運用に不安」85% 県保険医協会が開業医調査

マイナンバーカードと健康保険証を一体化した「マイナ保険証」の導入について、県保険医協会が会員(開業医)に実施したアンケートによると、導入・運用に「不安がある」と答えた人が全体の8割を超え、システム未導入の場合、22年度末までに導入できるかどうか「分からない」と回答した人は6割に上った。

 協会によると、マイナ保険証は医療機関の受付で専用機器にカードを読み取らせると、健康保険の資格を確認できる仕組み。昨年10月から本格運用が始まった。医療機関は読み取り機器や専用の端末を導入し、電子カルテなど既存のシステムに接続しなければならない。

 政府は6月、経済財政運営の指針「骨太方針」で、医療機関などに2023年4月からマイナ保険証に対応するシステムを導入するよう原則義務付けた。このため、協会は県内各機関の導入状況などを把握しようと8月31日~9月10日にアンケートを実施。対象の医師や歯科医師1458人中579人が回答した。

 導入・運用に「不安、不満がある」としたのは495人(85%)。理由として「利用患者が少ない」が68%で最も多く、「窓口業務の増加」「院内でのカード紛失や情報漏えいの責任を問われる」と続いた。

 システムを導入済みと答えたのは179人で、全体の3割にとどまった。導入を準備、検討中としたのは336人。うち、59%が「期限までに導入できるか現時点では分からない」と答え、「導入できる見込み」としたのは35%だった。

 自由意見では、「コロナ診療で疲れ果て、導入を考える余裕がない」として、期限延長を強く求める声が上がった。「へき地ではネットワーク環境がない」「維持費が厳しい」といった環境整備やコストを不安視する意見もあった。協会は9月28日、岸田文雄首相らに対し、カード普及までの義務化の猶予や、保険証の発行継続などを求める要請書を提出した。

 木村孝文会長は「自分でマイナ保険証の手続きができないと訴える高齢者が多く、受診控えにつながるのではないか」と懸念。「現場は機器の導入が間に合わないなど混乱している。理解が十分に広がってから取り組むべきだ」と訴えた。

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