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共食の機会を月に複数回以上もつことが高齢者の体重減少予防につながる可能性

東北大学は3月11日、共食頻度が「毎日」という人と比べて、「月に何度か」以上の頻度で誰かと一緒に食事を有する人では、体重減少のリスクに有意な違いは観察されなかった一方、「年に何回か」の人では1.07倍、「ほとんどない」人では1.17倍、体重減少リスクが高くなるという関係が観察されたと発表した。この研究は、同大大学院歯学研究科の草間太郎助教らの研究グループによるもの。研究成果は、「Age and Ageing」に掲載されている。

 誰かと一緒に食事をする「共食」は、ヒトにとって基本的な社会活動の一つである。過去の研究から共食の機会を有することが健康状態の維持に有益である可能性が示唆されてきた。体重減少は高齢者において重要な健康問題の一つであり、過去の研究から死亡リスクの上昇と関連することが明らかとなっている。共食の機会を有することは、栄養摂取に影響する可能性があるが、これまで追跡研究により共食と体重減少といった栄養状態の悪化との関連は明らかにされていなかった。

 研究グループは今回、要介護状態にない高齢者を対象とした3年間の追跡調査から、共食の頻度と体重減少のリスクとの関連を明らかにすることを目的として研究を行った。

共食頻度が「毎日」の群と比較して、「年に何度か」以下の頻度では体重減少リスク「高」

 2016年と2019年に実施されたJAGES(Japan Gerontological Evaluation Study; 日本老年学的評価研究)調査に参加した要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者を対象として、2016年から3年後の2019年時点までの間の「5%超の体重減少」の有無について、追跡研究を行った。

 5%超の体重減少は栄養状態の悪化の指標の一つであり、過去の研究から死亡リスクの上昇と関連することが示されている。共食の頻度については、「毎日」「週に何度か」「月に何度か」「年に何度か」「ほとんどない」の5区分を用いて、比較を行った。分析では、性別・年齢・教育歴・等価所得・婚姻状況・世帯人数・現在歯数・併存疾患(がん・脳卒中・糖尿病・認知症)・手段的日常生活動作・認知機能・うつ・野菜果物の摂取頻度・肉魚の摂取頻度・友人と会う頻度・ベースライン時点でのBMIの影響を取り除き、共食の頻度が「毎日」と比較したときの、それぞれの共食頻度の区分における相対的な体重減少のリスクを、ポアソン回帰モデルを用いて算出した。

 対象者5万6,919人のうち、3年間の追跡期間中に5%超体重が減少した人は15.1%(n=8,596)だった。また、共食頻度ごとの5%超体重が減少した人の割合はそれぞれ、「毎日」:14.3%、「週に何度か」:14.8%、「月に何度か」:14.6%、「年に何度か」:16.2%、「ほとんどない」:19.0%だった。

 他の要因を考慮して行った多変量解析の結果、共食頻度が「毎日」と比較したときに、5%超の体重減少のリスクが、「年に何度か」:約1.07倍(95%信頼区間:1.01-1.07)、「ほとんどない」:約1.17倍(95%信頼区間:1.08-1.27)において、統計学的に有意に高かった。つまり、共食頻度が「毎日」の群と比較して、「月に何度か」以上の頻度では有意な差が見られなかったものの、「年に何度か」以下の頻度では、体重減少のリスクが有意に高くなっていたという。これらの結果から、高齢者において、月に複数回程度以上、共食の機会を有していることが体重減少のリスクの低減に貢献している可能性が示唆された。

共食の機会をもつことが高齢者の健康維持に寄与する可能性

 新型コロナウイルスの流行は、高齢者の共食の機会に大きな影響を与えたと考えられる。今後は、流行状況を鑑みて、換気や人数制限といった適切な予防対策を実施した上で、人々が共食の機会をもつことが、高齢者の健康状態の維持に寄与する可能性がある、と研究グループは述べている。

「国民皆歯科健診を5年以内に」

日本歯科医師連盟の組織代表として7月の参議院選挙に臨む予定の山田 宏 参議院議員は、当選後に「国民皆歯科健診の実現」「歯科への正当な評価の確保(初再診料の医科歯科格差の是正)」「医学・歯学の相互教育の充実」などに取り組みたいとの考えを示した。

 山田議員は組織代表として推薦された点について「組織代表の仕事は、歯科医師連盟、全国の歯科医師の先生方のご要望をしっかりと形にするのが政治家の仕事。医学や歯学の専門知識で仕事をするものではない」と歯科医師でない点は問題とならないとアピールした。

 7月の選挙で当選した後に任期中に取り組みたいことについて、「国民皆歯科健診の実現」を第一に挙げ、すでに自民党の選挙公約に記載されており、党内に検討チームができる予定があることなどについて触れ、「高校までに終わっている歯科健診の義務化を全世代に広げ、年に1回は歯科健診を行うところまで、5年以内に実現するのが目標」と述べた。

【歯科通信】

「大学に学校歯科医を」

日本学校歯科医会の川本 強 会長は、岸田文雄 内閣総理大臣を表敬訪問した際に、大学への学校歯科医の設置を要望したことを明らかにした。

 川本会長は、目に見える口の中の教育を通して「生きる力」を獲得し、ライフステージ後半においては「生き抜く力」に昇華してもらうことが究極の願いと強調。日本で健康寿命と平均寿命の差をなくすためには、児童生徒の時期から生き抜く力を自ら養っていく必要があると述べた。そして、「私たちは3歳から高校まで学校歯科保健教育をしているが、大学では学校歯科医の存在根拠がないので、(岸田総理に)作っていただきたいと要望した」と報告した。

【歯科通信】

診療報酬改定 歯科初・再診料は3点増

 令和4年度診療報酬改定について議論してきた中医協は9日、4月からの新点数等を答申した。歯科では、初診料の施設基準の研修内容に「新興感染症に対する対策の研修」を追加し、歯周基本治療処置等の廃止と併せて初再診料を見直し、それぞれ264点(3点増)、56点(3点増)となった。

 また、「CAD/CAMインレー(1歯につき)」750点が新設される。中医協の答申で明らかになったもので、医療技術評価分科会で優先的に保険導入すべきとされた新規技術なども収載される。

【日本歯科新聞】

虫歯治療で2歳死亡、業過致死罪の元院長が無罪主張 検察は禁錮求刑

福岡県の歯科診療所(現在は閉鎖)で20〇〇年、虫歯治療で麻酔を注射された幼児(当時2)が死亡した事故で、業務上過失致死罪に問われた元院長で歯科医師の論告求刑公判が28日、福岡地裁であった。検察側は「歯科医師としての基本的な注意義務を怠った」として禁錮2年を求刑し、弁護側は無罪を主張して結審した。判決は3月25日。

 「 プラスチック資源循環促進法 」

 4月1日から「プラスチック資源循環促進法」が施行されます。
 この法律は、プラスチックを使用する製品の設計、使用、処理のライフサイクル全般において、あらゆる主体によるリデュース、リユース、リサイクルその他の再生を促進するための法律です。重要なポイントは、特定プラスチック使用製品、いわゆる使い捨てプラスチックと言われるものの多くについて思い切った使用の削減を求めている点です。
 国が特定プラスチック使用製品として定めているのは、フォーク、スプーン、ナイフ、マドラー、ストロー、ヘアブラシ、くし、カミソリ、シャワー用キャップ、歯ブラシ、ハンガー、衣類用カバーの12品目。対象事業者は、小売業、宿泊業、飲食店、持ち帰り・配達飲食サービス業、洗濯業です。
 ローソンでは、持ち手の柄に穴を開けて軽量化したプラスチック製スプーンとフォーク、木製スプーンを導入すると発表しました。
 また、仙台市の秋保温泉旅館組合に加盟する10社、14施設は、歯ブラシやヘアブラシなどは紙や木材、石灰石などの素材で作られたものに入れ替え、プラスチック製が多いカミソリやシャワーキャップなどの一部の備品については、無料提供を終了し、顧客による持参や購入に切り替えて対応すると発表しました。
 背景には、海洋プラスチック問題・温暖化問題など環境問題の深刻化、諸外国による廃棄物輸入規制強化に伴うプラスチック資源循環の必要性の高まりがあります。
 2019年の使い捨てプラスチックの廃棄量は世界全体で1億3000万トンでした。
国別では中国と米国が突出して多く、その2ヵ国で全体の約3分の1を占めています。3位はインド、日本は4位でした。
 海洋の環境を守ることは、国連の持続可能な開発目標(SDGs:SustainableDevelopment Goals)の14番目の目標「海の豊かさを守ろう」につながります。
プラスチック資源の循環が進むことが期待されます。

歯科技工士を魅力ある職種に  ― 千葉県歯がシンポジウム

ここ20年で歯科技工士養成機関は3分の2に、入学者数は3分の1に減少し、求人倍率が上昇しているものの、20代の離職が多く、30歳で続けているのはわずか4%。10年後には歯科技工士数は現在の4割となる可能性も示唆されている。

 そんな歯科技工士が魅力のある職種になるにはどうすれば良いのかを模索するシンポジウムが、2月1日から3月31日まで千葉県歯科医師会の歯科技工士研修プログラムのサイト上でオンデマンド配信されている。

 現状を改善するためには行政、歯科医師会、歯科技工士会、医療連携をしている関係者、メディア、政治家などあらゆる人の力が必要との認識が示された。


【歯科通信】

空間除菌、効果あるの? コロナで関心、ご注意を 「気休めにはリスク高い」

新型コロナウイルスの感染拡大で空間除菌剤への関心が高まる中、消費者庁が販売業者の行政処分に力を入れている。「身に着けるだけでウイルス除去」などと手軽さをうたうが、同庁は表示の根拠が乏しいとして注意喚起。医療情報のリテラシー(読解力)に詳しい医師は「臨床試験で効果効能が証明されていないことを、消費者は知っておくべきだ」と訴える。

 ラッパのマークの胃腸薬「正露丸」で知られる大幸薬品(大阪府吹田市)は、空間除菌剤「クレベリン」シリーズで6商品を展開する。需要増に対応するため、2020年11月には工場を新設。コロナ禍前の約10倍に生産能力を引き上げた。

 しかし今年1月、スプレー型や携帯型など4商品が景品表示法違反(優良誤認)に当たるとして再発防止命令の対象に。一方、置き型の2商品は東京地裁が「実際の生活空間に浮遊するウイルスなどを除去する効果を、裏付ける合理的な根拠がある」として命令差し止めの仮処分を決定した。

 消費者庁の命令を受け、対象商品を販売中止にした大手ドラッグストアも。東京都内に住む50代の女性は「効果があるのか疑問だった。手洗いの徹底やドアノブの消毒など自分でできる対策をしたほうが良いと思う」

 厚生労働省はホームページで「消毒剤の有効・安全な空間噴霧方法が科学的に確認された例はない」と強調。「空間噴霧用の消毒剤として承認された医薬品・医薬部外品もない」とし、消費者庁も同様の見解を示す。

 空間除菌剤による健康被害も確認されている。13年には1歳9カ月の男児が、置き型の除菌剤に添付されていたゲル化剤を誤飲。血液中の酸素が体内に行き渡りにくくなる「メトヘモグロビン血症」を起こした。

 原土井病院(福岡市)の内科医、酒井健司(さかい・けんじ)さんによると、成人が健康被害に遭った例もある。呼吸困難で受診した38歳の男性が中毒性メトヘモグロビン血症と診断された。数時間前に自宅で除菌剤を使用したという。

 酒井医師は「短時間で空気中のウイルスを不活化できる濃度の化学物質は、人体に有害である可能性が高い」と指摘。「空間除菌用品は『医薬品』ではなく『雑貨』として販売されている。コロナ対策に気休めで使うにはリスクが高いのではないか」と話した。

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