各地の大学で医学部新設へ向けた動きが広がり始めている。文部科学省は80年以降、医学部新設を認めていないが、民主党は医師不足対策として医学部の新設も掲げており、近く容認に向け本格的な検討が始まる見通し。ただ、既存の大学医学部や日本医師会は「現場の臨床医を教員として引き揚げねばならず、地域医療が崩壊する」などと反対しており、新設容認へ向けた議論の行方は不透明だ。【福永方人】
医学部新設を具体的に検討しているのは、北海道医療大(北海道当別町)▽国際医療福祉大(栃木県大田原市)▽聖隷クリストファー大(浜松市)--の私立3大学。いずれも学内に検討委員会を設け、定員やカリキュラムなどを協議している。また、公立はこだて未来大(北海道函館市)も、函館市が識者らでつくる懇話会を設置し、新設の可能性を検討している。
北海道医療大は入学定員60~80人を想定。大半を歯科医や薬剤師、看護師などが対象の編入枠とし、医師不足が深刻な道東地域への医師配置を目指す。同大医学部設置検討ワーキンググループ座長の小林正伸・看護福祉学部教授は「地域医療の担い手育成は急務。国から医学部新設のゴーサインが出たらすぐに手を挙げられるよう準備したい」と話す。
国際医療福祉大は、現在の医学部設置基準の上限である定員125人程度を想定。聖隷クリストファー大は、4年制大学卒業者を対象とした「メディカルスクール」の創設も視野に入れている。
医学部の設置は79年の琉球大が最後。国はそれ以降、医師が過剰になるとの将来予測などから新設を認めてこなかった。
民主党は昨夏の衆院選に向け公表した政策集で、医師養成数の1.5倍増を掲げ、「看護学科等を持ち、かつ、病院を有する大学の医学部設置等を行う」とした。全国の病院と診療所を対象とした厚生労働省の「必要医師数実態調査」の結果が今月中にも公表される予定で、鈴木寛副文科相は6月の記者会見で「調査結果を受けて関係省庁、関係者と(医学部新設について)本格的な議論に入りたい」と述べている。
一方、大学医学部でつくる全国医学部長病院長会議や日本医師会は「既存の医学部を拡充する方が財政的に有利」「医師が充足した時に養成数を減らしにくくなる」などとして医学部新設に反対している。
毎日新聞 9月19日(日)2時30分配信